お伽草子の絵巻に引き込まれる「サントリー美術館」

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東京ミッドタウン内にありアクセスのよいサントリー美術館 (c)木奥恵三

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サントリー美術館では、『お伽草子―この国は物語にあふれている―』展を11月4日まで開催しています。この国は物語にあふれている…なんて、ロマンチックなタイトルでしょう。訪れる前からワクワクしませんか。

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お伽草子と聞いて思い浮かぶのは「一寸法師」や「浦島太郎」といった物語ですが、お伽草子とは室町時代から江戸時代初期にかけて作られ、幅広い階層に愛読された短編小説です。現存作品は400種類にものぼり、現代でもよく知られている物語がほかにもたくさんあります。

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浦島絵巻(部分)一巻 16世紀 日本民藝館蔵

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一寸法師や浦島太郎の内容を思い出してみてください。子どもの頃に夢中になったそれらの物語は、大人になった今よくよく考えてみると、一寸(約3cm)しかない人間が鬼を退治し打出の小槌で大きくなる、亀の背中に乗って竜宮城に行き帰ってきたらお爺さんになってしまったという、なんとも奇抜な設定の物語です。こうした題材の斬新さがお伽草子の特徴で、物語の世界をつくっています。

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平安時代を代表する小説は、「源氏物語」のような貴族の恋愛ものでしたが、時が経つにつれて人々は新たな物語を求めました。そんな時に生まれたのがお伽草子です。
室町時代は、たび重なる戦乱により政治や経済だけでなく文化にも変革をもたらしました。それまでの貴族中心の物語では脇役だった、僧侶や庶民を主人公にした物語を生み出したのです。
サントリー美術館によると、こうした主人公の多様化は、物語の作者や読み手の変化と深く関係していて、お伽草子ならびにお伽草子絵は社会の変革の投影、文化の創造を担う新たな階層の台頭を伝える一現象と捉えることができるそうです。

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展示は5つから構成されていて、最初にお伽草子が登場した14・15世紀の絵巻の優品を見ながら時を遡ります。平安時代から鎌倉時代までは、物語の主人公もそれを読むのも貴族でしたが、鎌倉時代末期になると武士が登場する物語が多く生み出されます。お伽草子の武家物の代表作は、「酒呑童子」です。源頼光たちが武力で鬼神・酒呑童子を征伐する物語は、どの絵巻を見ても酒呑童子の恐ろしい形相に息を飲むばかり。それを退治する物語は、痛快な冒険譚として人々の人気を博したに違いありません。

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どのお伽草子も時代設定はあいまいですが、物語の舞台は特定の場所が示されることがありました。なかでもよく登場したのが京都・清水寺です。その数は40篇を超え、現存するお伽草子作品の約1割を占めています。なぜ清水寺に関する作品が多いのか、絵巻の展示とともに物語が生まれた時代背景と信仰も探られていて、興味深いです。

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清水寺が舞台の絵巻のうち、必見は「鼠草子絵巻」。鼠の権頭(ごんのかみ)が人間をお嫁さんに迎えたいと祈願し、美しい姫君と出会ったのも清水寺でした。愛嬌ある鼠の顔に引き込まれてしまいます。

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部分)狩野元信筆 三巻 1522年 サントリー美術館蔵

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部分) 五巻 16世紀 サントリー美術館蔵

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ここで紹介しました有名なお伽草子以外にも、たくさんの絵巻が展示されていますが、物語の内容をまったく知らなくても大丈夫!展示されている絵巻は物語の一部分でそれだけを見ても話がわからないので、どれもあらすじが一緒に記されています。
私たちは絵本で、昔の人々は絵巻でお伽草子に親しんできました。物語だけでなく、そこに描かれているお伽草子の絵も大きな魅力でした。歴史的な変革をお伽草子から垣間見ることもできますが、まずは純粋に、お伽草子と絵を楽しみに行ってみてくださいね。

 

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インフォメーション

サントリー美術館は、1961年に千代田区丸の内で「生活の中の美」をテーマに開館しました。2007年に現在の東京ミッドタウン内に移転し新たなスタートを切り、絵画・陶磁器・漆工・東西のガラス・染織などさまざまな魅力あふれる企画展を催しています。

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●アクセス

東京都港区赤坂 9-7-4東京ミッドタウン ガレリア3階
TEL 03-3479-8600
都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木駅」より東京ミッドタウンまで地下直結
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://suntory.jp/SMA/

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写真協力:サントリー美術館
※展示替えあり
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http://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html