以前こちらでも紹介しました横浜の“氷川丸”を見て以来、美肌茶房編集部の私は、機能美の塊、船にすっかり魅了されてしまいました。都内にも展示施設がないかと探し、見つけたのが「船の科学館」です。こちらでは、初代南極観測船“宗谷”を見ることができるのです。
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“宗谷”乗船前に、船の科学館MINI展示場でお勉強しましょう
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お台場に遊びに行ったら、ちょっと足を伸ばして“宗谷”に乗船してみてください
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氷川丸は豪華客船でしたが、宗谷は任務を胸にバリバリ働いていた船。まったく違う目的で造られた船です。昭和13(1938)年に耐氷型貨物船として建造された宗谷は、太平洋戦争を経験、戦後は引楊船、灯台補給船の役割を担っていました。その宗谷の運命が大きく変化したのは昭和31(1956)年11月です。日本初の南極観測船としての任務が課せられ、昭和37(1962)年4月まで、計6回にわたる南極観測で活躍しました。昭和53(1978)年に退役するまでは海上保安庁の巡視船として活躍し、昭和54(1978)年5月から、船の科学館前に係留、展示されています。
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子どもたちが、かぶりついて見ていた“南極の氷”
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タテとヨコの大きい人には窮屈な船内の通路
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宗谷に乗船してみると、無駄な装飾はなく、船内はいたってシンプルです。乗組員の居室も公開されていますが、階級によって居室は異なり、個室があるのは船長、機関長、航海長だけ。士官はベッドが2つある2人部屋でしたが、そのベッドのサイズはたて180×よこ65cm。当時の日本人にはちょうど良い大きさだったのかどうかはわかりませんが、現代人では寝返りも打てないような狭さです。さらに下の、士官以外の乗組員は2段ベッドを2つ入れた4人部屋でした。
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船内には南極観測当時の資料を展示している場所もあり、子どもにもわかりやすく記されています。船内の各所に設けられている説明は真面目で型通りですが、ちょっとユニークな点があります。
それは、マネキンがあることです。乗船して最初に見る機関長室は、通路から見るだけで中には立ち入れません。それなのに、中のソファに座って寛いでいるオッサンがいる!と思ったら、それはマネキンでした。着ているスーツもよく見てみると制服。キリッとした顔立ちで、ハリウッドスターのような容姿のマネキンです。まさか展示物に混ざってマネキンがあるとは誰も思いもしないので、登場客はここで一瞬たじろぎます。
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これだけかと思ったらマネキンは続々と登場し、慣れてくるとだんだん楽しくなってきます。例えば、4人部屋では、髭がワイルドなイケメン乗組員が、ベッドに横たわり仲間と談笑しています。また、観測隊員と宗谷乗組員の計130人分の食事を用意していたという調理室では、コック帽をかぶり、白い長靴、エプロン姿のマネキンが、忙しそうに働いています。薄汚れた白いランニングシャツが、リアリティーを感じさせます。
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男前でポーズも決めすぎな乗組員マネキン
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調理室には豆腐製造機までありました
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すべての展示室にマネキンがあるわけではなく、ところどころで登場します。もう出てこないのかと思って油断していたら、次の展示室で立っていたりするので、驚いてビクッとなることもまた面白いのです。治療室では、白衣の不気味なマネキン医者が上半身裸のマネキン患者を診ています。南極観測当時、虫垂炎程度の手術なら治療室で行っていたそうです。
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人間のマネキンがあるなら、もしや…と思っていたら、いました、いました。マイナス40℃の極寒を耐え抜き、生き延びたタロとジロもちゃんと展示されています。通路の奥に、ぬいぐるみよりも精巧な犬の姿が見えたときは、嬉しくなってつい駆け寄ってしまいました。後ろにいた親子も「あっ!タロとジロだ!」と嬉しそうな声を上げていましたから、どこかにタロとジロもいるかも?!と、期待していたようです。
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(左)虫垂炎の手術も行われていた治療室
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(左)カラフト犬もマネキンに劣らないリアルさ
乗船して近くで展示物を見るだけでも、当時に思いを馳せることはできます。しかし、マネキンがあることで、遠い過去の出来事ではなく実際にこうして働いていた人たちがいたことを、より現実味をもって感じることができます。そして、マネキンたちが働いている姿が、宗谷をまだ現役のようにイキイキとしたものに見せているのです。
お台場に行ったら、ぜひ足を伸ばして宗谷に乗船してみてくださいね。「船の科学館」と聞いたら硬そうな印象ですが、行ってみると思いのほか楽しめますよ。
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(左)氷の海を突き進んで行った、直径3mのスクリュープロペラ
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(左)お天気の良い日は爽快です
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インフォメーション
船の科学館は、船舶や海運、海上保安などに関するものを展示している博物館です。現在、リニューアル準備のため、本館展示公開を中止していまが、初代南極観測船“宗谷”の屋外展示や、船の科学館MINI展示場を公開中です。模型や各種映像展示を通じて日本をとりまく海や船舶について学ぶことができます。
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●アクセス
東京都品川区東八潮3-1
TEL 03-5500-1111
ゆりかもめ「船の科学館駅」より徒歩5分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.funenokagakukan.or.jp/
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