以前ご紹介しました福島の「日本きもの文化美術館」を訪れたとき、館内に置いてあった各地の美術館のフライヤーを何気に見ていて、いつか必ず行きたい!と思った所がありました。それが、今回ご紹介する「ぬりえ美術館」です。
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「いつか来ようと思ってた!」と全国からきいちファンが訪れる、ぬりえ美術館
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福島の美術館でたまたま出合った、昭和レトロで懐かしい、カワイイ女の子のぬりえ。もっとたくさんのぬりえが見たくて、「ぬりえ美術館」に行ってきました。
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美術館がオープンするのは土日祝日のみ。しかも下町の住宅街にあり、隠れ家的な美術館です。都電荒川線に乗り、町を走り抜ける車窓を楽しみながら、美術館のある荒川区町屋に向かいました。
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美術館に着いて扉を開けると、さっそくカワイイ女の子のイラストが出迎えてくれました。
昭和20~30年代に流行した、蔦屋喜一(つたやきいち)さんの「きいちのぬりえ」です。
今年の8月に10周年を迎えるぬりえ美術館では、記念企画として、5月27日まで『きいちのぬりえ・きせかえ原画展~鮮やかな色が、今よみがえる~』を開催しています。通常は3カ月に一度のペースで展示替えが行われているそうですが、10周年の記念すべき今回の企画展では、開館して初めて、ぬりえときせかえの原画が展示されています。
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扉を開けた瞬間からメロメロになるカワイサ♪
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きいちのぬりえは、1袋5~12枚入り(時代によって異なります)で販売されていました。きいち自身が丁寧に色をぬっていた袋の表紙絵が、子どもたちのお手本であり、創造力をさらにかきたてるものでもありました。
白黒の線で描いたぬりえは、昭和22年当初には原画を描き印刷をしましたが、その後の印刷技術の進歩により、直接亜鉛版(ジンク版)に描くようになったので、ぬりえの原画は無くなりました。
今回の10周年記念で展示されている「原画」とは、ぬりえが入っていた袋の表紙絵の原画になります。時代的には昭和30年代のもので、きいちの特徴でもある鮮やかな原色が丁寧にぬられています。きいちは元々パステルカラーが好きでしたが、それではあまり売れないことから、ビビッドな色を使うようになったそうです。確かに原色の方がメリハリがあり、生き生きとした躍動感が伝わってきて、見ているだけでも楽しくなりますよね。
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鮮やかな色使いが特徴の“きいちのぬりえ”原画
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男の子用のぬりえもありました! 横綱・大鵬のぬりえ
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美肌茶房読者の中にも、リアルタイムできいちのぬりえを楽しんだ方がいらっしゃるのではないでしょうか。きいちのぬりえは、身近にカワイイものがなかった当時の子どもたちに、夢やあこがれ、希望を与える存在でした。その魅力は年月を経ても変わらず、美術館を訪れてはじめて目にした人にも、新鮮なドキドキ感をもたらしてくれます。
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全体の6割を占める“きいちのぬりえ”世代の来館者。終始はしゃいでいて、とっても楽しそうです
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取材に伺った時にちょうど来館していた20代のカップルは、初めて見るきいちのぬりえを、とっても楽しそうに二人で眺めていました。また、その後やって来た荒川区内の老人施設の方たちは、皆さんではしゃぎながら、きいちのぬりえを懐かしみ、愛おしそうに見つめ、ゆったりと館内で過ごす時間を楽しんでいました。ぬりえ美術館には全国から様々な年代の方が集まり、それぞれの幼少期の思い出を重ねながら思い思いに楽しんでいます。
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進化したぬりえ“デコぬりえ”。額に入れて飾ると、新たなアートです
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子どものころ夢中になったぬりえに、大人になったいま改めて取り組む“大人のぬりえサロン”を、美術館では毎月第3木曜日に開催しています。「またぬりえをしたくなった!」という来館者の声をたびたび耳にした金子マサ館長が発案してはじまった、関心のある方なら誰でも参加OKのサロンです。
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大人のぬりえサロンでは、昨年から進化したぬりえ“デコぬりえ”を楽しんでいます。デコぬりえとは、ぬりえをした上にビーズやスパンコール、レースを貼ってデコレーションするぬりえです。デコることで立体的になり、きいちのぬりえがさらに生き生きして見えます。また、ぬりえ+デコはますます個々の創造力を発揮でき、個性あふれる作品ができあがります。
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取材に行った日は、70代のご両親を連れた40代の女性、20代の女性同士、30代の男性、50代の女性のグループなど、さまざまな年代の方が来館していました。誰かと一緒に来て絵画を楽しんだり、漫画関連の展示で懐かしさを共有するのも良いですが、ひとりで時間を気にせずじっくり見てまわるのもおすすめです。
どんな年代の方でも楽しめる長谷川町子美術館へ、ひと足早い春を感じに出掛けませんか。
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伸びやかに自由に想像力を働かせ、自分らしさをプラスして色を加えていくぬりえですが、ぬりえを楽しむことは、自然と子どもの情操教育にもなります。配色を考え、手を動かすので“脳を活性化させる”として、2006年頃から大人にも注目されるようになりました。
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来館者に気さくに声を掛け、説明もしてくれる金子マサ館長。ぬりえのこと、きいちのこと、何でも尋ねてみてください
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遊びながらそんな効果も期待できるなら、また、ぬりえをしてみたくなりませんか。
「のんびり館内を見てもらって、ぬりえを楽しんでいっていただけると嬉しい」と話してくれた金子館長。美術館には自由に遊べるきせかえやぬりえもあり、来館者に喜んでもらいたい、子どもの頃に夢中になったぬりえにまた触れてほしいという想いが伝わってきます。自由に使ってもよいぬりえ本を手にとって遊んで帰る来館者も多く、黙々と手を動かしている姿は楽しそうで、見ていてほほえましくなります。
今度の週末、都電に揺られてのんびりと、ぬりえ美術館に出掛けてみませんか。
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子どもだけでなく高齢の来館者も、顔を入れて嬉々として写真を撮っていきます
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館内で自由に遊べるぬりえ
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きせかえも楽しめます
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自分用、お土産用にと買って帰る人が多い、ぬりえ本や美術館オリジナルグッズ
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インフォメーション
ぬりえ美術館は、昭和20~30年代に少女たちの間で流行した「きいちのぬりえ」を中心に展示している、日本で唯一のぬりえに特化した美術館です。「きいち」こと蔦屋喜一氏の姪にあたる館長の金子マサさんが2002年8月に開館し、ぬりえ文化を発信しています。
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●アクセス
東京都荒川区町屋4-11-8
都電荒川線「町屋二丁目」または「東尾久三丁目」より徒歩7分
TEL 03-3892-5391
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
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