小石川後楽園で“滝浴び”しましょう

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東京ドームの白い屋根が後ろに見えます。都心にある緑深い公園です。

 

8月7日は立秋。暦の上では秋に入りましたが、東京ではまだ30度を超える暑い日が続いています。そんな暑苦しい日に身近な水辺で涼をとることがパワーチャージになりますよね。
そこで今回は都心にあるお勧めのオアシス、小石川後楽園を訪ねてまいりました。JR飯田橋駅から徒歩8分とアクセスも良く、駅前にある交通量の多い外堀通りの喧騒とはまるで別世界、憩いの公園がそこにはありました。

 

小石川後楽園は、江戸時代初期の寛永6年(1629年)に水戸藩徳川家の祖である頼房が、その屋敷として造ったもので、二代藩主の黄門様こと光圀の代に完成した庭園です。光圀は作庭にあたり、明の儒学者である朱舜水の意見をとり入れ、中国の教え「(士はまさに)天下の憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」から「後楽園」と名づけられました。この名前の背景は岡山県のある後楽園と同じですが、国の史跡および名勝に指定される際に岡山の後楽園と区別するために「小石川」とつけたそうです。

 

入園料を払い、順路に従い少し歩くと眼前に大きな池が広がります。この庭園様式は「回遊式築山泉水庭」といい、広さ7万平方メートルの広大な敷地の中に、中国や日本名地の名所の名前をつけた景観があちこちに配されています。
例えば、庭園の中心にある大きな池「大泉水」は琵琶湖がモチーフになっています。「渡月橋」は京都・嵐山にある橋を模したもので、再現された「大堰川」の流れも渡月橋あたりの風情を表現しています。また、中国の西湖は白楽天や蘇東坡ら当時の文人が憧れた杭州の景勝地ですが、その湖面を直線的に分ける名物の堤防「西湖堤」も見ることができます。島や山、橋など小さく表現することを「縮景」と言いますが、小石川後楽園にはいたるところに水を用いた縮景が散りばめられています。ここに招かれた人々は、この庭を回遊するだけで贅沢な旅の気分を味わったことでしょう。今も残る景観を眺めていると、戦乱も終わり泰平の世となった江戸時代、庭園にはるかなる理想郷を表そうとした当時の人の想いが時空を超えて伝わってきます。

 

中央にあるのが蓬莱島。琵琶湖を模した大泉水に浮かぶ島で、古代中国では仙人が住む仙境に一つとされてきました

 

整備され歩きやすい散策路には木々の緑が溢れ、蝉しぐれが降り注いでいました

 

これは京都・東山東福寺の「通天橋」を模したもの。11月には周囲の紅葉が朱塗りの橋を引き立てます

 

左の橋が渡月橋、そのたもとから右へ伸びる西湖堤。夢の競演です

 

徳川幕府のもとで、諸藩の大名は江戸にある屋敷を舞台に作庭を競いあっていたそうです。これらは大名庭園と呼ばれ、贅を尽くした庭園の技術は江戸から全国へ広がって行きました。この小石川後楽園は大名庭園の代表作です。
京都の庭園は狭い空間を縮景的に利用し、背後の自然を取り込む工夫をしていますが、これに比べて江戸の庭園は周囲に樹木を植え外景を遮断して、大きな池の周りを回遊しながら景観を楽しむという違いがあります。今ではお寺などに有名な庭が多く残るせいか日本庭園文化のメッカは京都という印象がありますが、当時の江戸は、日本はもとより世界を代表する「ガーデンシティ」だったそうです。

 

白糸の滝は六代・治保のときに造られました

 

小石川後楽園は小石川台地の先端に位置し、神田上水の分流を引き入れ作庭されました。きれいな水が絶え間なく流れようにするには、当時は大変な苦労があったのでしょう。大泉水に流れ込むせせらぎにある「白糸の滝」。落差は1メートル位で小ぶりですが、白糸を垂らしたように落下する水の様子はなかなかのもの。沢渡りができるよう置かれた石から滝を眺めると、涼やかな水音がとても心地良いです。全国各地に白糸の滝と名付けられた名瀑がありますが、この都心のミニチュアな滝も風情があります。水のある風景と水音で客人をもてなそうとした庭の作者の美意識や優しさが感じられます。

 

私が訪ねた平日の午後、園内にはカップルや撮影が趣味のカメラおじさんたちがポツポツと見えるほどの入りで、とてものんびり過ごせました。春にはサクラ、秋には紅葉も楽しめるので、各シーズンには混みあうかもしれません。逆に夏こそパワスポとして、水辺や木陰に涼を求めて訪れてみてはいかがでしょうか。

 

蓮池には水面いっぱいに蓮が競うように伸びていました。蓮の花は午前中に開いて、午後になると順次閉じていきます

 

旅行ガイドに紹介されているのでしょうか、外国人の旅行者を多く見かけました

 

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アクセス

東京都文京区後楽1丁目
都営地下鉄大江戸線「飯田橋駅」より徒歩3分、JR・および東京メトロ各線「飯田橋駅」より徒歩8分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index030.html
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