地獄を見て学び、仏の国で未来を描く「全興寺」

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大阪市平野区。昭和時代の町にタイムスリップしたような商店街にある、全興寺(せんこうじ)。1300年以上前に聖徳太子が薬師如来を安置し、創建されたという歴史がある寺です。
元より、人々の祈り、祭り、学びの場であった寺の存在。全興寺の境内には、それを思い起こさせる事物が散りばめられています。

 

薬師如来を安置する本尊

 

レトロな趣がある寺の看板

 

境内でひときわ目を引く「地獄堂」。まずは入り口に掲げてある問いに答え、「極楽への道・地獄への道」を診断します。自分の胸に手を当てて日ごろの行いを振り返りましょう。「絶えず不平不満が多い」「時間も金も無駄遣いする」などに当てはまれば要注意。地獄行きの可能性があるかもしれませんよ。

 

恐ろしいエンマ大王の姿が目の前に

 

舌切ばさみを持った鬼と亡者の衣服をはぎ取る奪衣婆

 

中で待ち受けるのは、迫力のエンマ大王。ドラを鳴らすと鬼と奪衣婆(だつえば)が現れ、「人を裏切れば釜ゆでに、盗みをしたら火あぶりに・・・」などと、地獄絵図を展開します。
子どものころに聞いた、現世の行いを問われる三途の川の風景。「嘘をついたらエンマ大王に舌を引きぬかれるよ!」と教えられたことを思い出し、ぞっとしました。この得も言われぬ恐怖が、人間の善悪の判断、道徳心を支える原点なのでしょう。

 

地獄堂の入り口

 

エンマ大王による極楽度・地獄度チェック

 

境内の奥に進むと、「涅槃仏」があります。お釈迦様の寝姿を表したガラス像を見つめながら、今度は心を穏やかに。悩みや迷いにとらわれそうな時こそゆっくりと心を落ち着け、真理を見通す時間を得ることが大切だと感じられます。
悟りへの道は、さらに続きます。「ほとけのくに」と書かれた地下空間には、151体の石仏が見守る美しい曼荼羅があります。ステンドグラスでできた曼荼羅の上に座るとひんやりと心地よく、頭がすっきりと冴えわたるように感じられます。水琴窟の音色に癒やされ、心ゆくまで瞑想の時間を過ごすことができました。

 

水をかけて拝むと願いが一つ叶うという一願不動尊

 

お釈迦様の足の裏をかたどった仏足石

 

他にも、境内には物事の真理を考えさせられるきっかけがいっぱい。しかし堅苦しくなく、ユニークな雰囲気なのが、「おもろい寺」と呼ばれる全興寺ならではです。童心に返って遊びながら、日ごろの行いを見つめなおすことができます。

 

また、毎週末、「あそび縁日」と題して街頭紙芝居、バイゴマ遊びやおじゃみなどの伝承遊びが行われています。地域の子どもと大人が自然と集い、日が暮れるまで境内に笑い声を響かせています。人から人へと伝えられる昔話や遊び。その中から子どもたちは、テレビやゲームからは得られない、道徳心を身につけることができるのでしょう。情報があふれる今だからこそ、新しいことを追うばかりではなく、大事なものを掘り起こすことも大切に。地獄の教え、仏の修業を経て、大人も人間としての原点に返ることができるパワースポットです。

 

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アクセス

全興寺
大阪市平野区平野本町4-12-21
大阪市営地下鉄「平野駅」、JR「平野駅」から徒歩約12分
http://www.senkouji.net/
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