連理の賢木で縁結び「下鴨神社(賀茂御祖神社)」

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高野川と賀茂川がちょうど合流する地に広がる「糺(ただす)の森」、世界遺産にも登録されているこの緑豊かな原生林を抜けた先に下鴨神社は鎮座しています。その創建は古く、特定は困難ですが、目下の所、崇神天皇七年(BC90年)に、神社の垣根の修理が実施された記録の見られる頃を創始とする説が有力のようです。時代を経て、奈良時代には社の祭りに多くの人が足を運び、続く平安時代にはすでに国と京都の守り神、そしてまた皇室の氏神として厚く信仰されるに至っています。そして現在、全国に広がるおよそ1200のカモ(賀茂、鴨、加毛)社と深い関わりを持つ下鴨神社は、同じく京都の上賀茂神社とともに全国カモ社の総本山として日本のみならず世界にその名を発信しています。

 

参道。周囲はおよそ12万4千平方メートルにも及ぶ「糺の森」が広がっています

 

鴨長明の方丈。長明が住んだとされる庵で摂社の河合神社境内に据えられています

 

祭神は賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と玉依媛命(たまよりひめのみこと)の2神。賀茂建角身命は京都を守護する神として知られ、平安京を造営するに当たっては、当社にてその成功祈願が行われました。また古くは神武東征の折、高木神と天照大神の命を受けて、日向の曾の峰(そのたけ)に降臨したのち、八咫烏(やたがらす)に化身して神武天皇を先導した故事を持ちます。そこから導きの神として、とりわけ方除、厄除けのご神徳があるとされています。

 

玉依媛命については「山城国風土記」に記載の以下のエピソードが著名。つまり玉依媛命が禊をしていた賀茂川の上流より流れ来た丹塗(にぬり)の矢を拾って床に置けば、たちどころに美しい男神に変化した。この故事から玉依媛命はとりわけ縁結、子育ての神さまとして信仰を集めています。

 

ここでは下鴨神社の広大な境内、中でも厄除けと縁結びのご利益があるとされるパワースポットを幾つかご紹介しましょう。

 

御手洗社

 

相生社

 

井戸の上に建つことから別名井上社とも称される「御手洗社」。その前方には水が溜まった御手洗池、そこから細く流れて御手洗川を形成しています。土用の丑の日にはこの池で御手洗祭が催され、無病息災を祈願し池に足をひたすいわゆる足つけ神事でこの場は賑わいます。また立秋の前夜には、池の中央に立てた50本の斎串(いぐし)を裸になった男達が一斉に奪い合う矢取りの神事が行われます。この斎串には安産、商売繁盛のご利益があるとされ、川で催されるのは前述玉依媛命の故事に依拠しているよう。なお土用になると決まって川の底から水の泡が湧き出しますが、これを人の形にかたどったのが御手洗団子、そこゆえ今ではこの池、御手洗団子発祥の地としても知られるようになりました。

 

連理の賢木は相生社のすぐ隣に根を張っています

 

鮮やかな朱塗りの楼門が参詣者を迎えます

 

楼門前には相生社という小さな社があります。その祭神は神皇産霊神(かむむすびのかみ)で、縁結びの、そしてまた結納の神さまとして厚く尊崇されています。名前の産(ムス)は「苔むす」のムスと同じく生成の意、そして霊(ヒ)は日や火と同じ意味を持ち、霊妙な物を表わす言葉と考えられています。その名が示すよう前に立っただけでも何だか縁結びの恩恵を得られる特殊な気配をひしひしと感じられる社ですが、実際、この社が元で縁を紡ぎ下鴨神社で結婚式を挙げる人も多数いるようです。そしてその多くがおそらくこの社のすぐ横に立つ「連理の賢木(れんりのさかき)」のご神木にも参っていたことだろうと思います。連理の賢木は相生社の神様の神威によって2本の木が中途で結ばれ1つとなっています。その姿は縁結びや安産、育児、家庭円満のご神徳の現れだとされていますが現在のご神木は4代目。不思議なことにはこの神木、現役が枯れてしまうと、決まって糺の森のどこかで幹が結ばれた状態で次代のご神木が見つかるのだそう。そのあまりに特殊な現れからいつの頃からか京都七不思議の一つとしても語り継がれるようにもなりました。

 

本殿。西本殿に賀茂建角身命、東本殿に玉依媛命を祀っています

 

さざれ石。さざれ石とは小さな石という意味があります

 

最後に上賀茂神社との関連について、上社と下社でカモの漢字表記が異なっている理由について確認しておきましょう。元々一つの賀茂社として建っていたのがあまりに社の勢力が過剰となり、それを削ぐため文武天皇が社を上下に分断、その時は未だ上下とも「鴨」の漢字を当てていました。それを神亀3年(726年)に中国の慣習に従って、地名を嘉名でつけるようにしてからは区別の意味も含めて上社に賀茂の漢字を当てたといいます。また他説においては上賀茂神社も下鴨神社も実はともに通称で、正式名称は順に賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)、賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)と呼ばれカモの表記に違いはなく、つまりは難解な正式名称に辟易し、あくまで世間に飛び交う話題のレベルでカモの表記の混在を気にしているだけだとも言われています。その他多くの説があるようですが、いずれにしても下鴨神社と上賀茂神社は同じ賀茂氏の氏神を祀る神社として切っても切れない関係にありますから、下社を参詣されたならば、ぜひ上社にも向かっていただきたいと思いますね。

 

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