美術館入口では、大きな瓦のシャチホコがお出迎え
絵を描く際に使用するパレットをテーマにした「画家の魂・パレットとその作品―ピカソ・ダリから近代日本の巨匠まで―」展が、愛知県高浜市のかわら美術館で3月1日(日)まで開催されています。
パレットは、絵具を混ぜるための画材です。しかし単なる道具ではなく、絵具の量や色の配置など、そこには画家それぞれの個性が表れます。本展では笠間日動美術館(茨城県笠間市)の協力により、梅原龍三郎、安井曾太郎、林武をはじめとする日本近代洋画の巨匠たちや現在活躍中の作家に加え、ピカソやダリなどの海外作家をあわせた50作家のパレットと絵画を展示。「パレットと絵画」を一対にすることで、絵画だけでは気が付かない、新しい魅力を紹介しています。
1階の展示室には、国内外の巨匠のパレットと絵画が壁面に飾られています。大半のパレットには、盛り上がった絵具のすき間に絵が描かれており、まるでパレットをキャンバスに見立てた一つの作品のようです。例えば、林武の赤冨士、鴨居玲の自画像など。片岡球子の色鮮やかな舞人絵は本格的に描き込まれ、その細かさに驚かされます。一方で、シンプルにサインだけというのもあり、逆にしゃれた感じで興味深いと言えましょう。
海外の画家たちのパレットも個性的です。ピカソは絵具をパレットの上でしっかりかき混ぜていたであろう跡が観られ、ダリは絵筆や使いかけのチューブもパレットとともに展示。マティスは等間隔に整然と色を並べています。また、ユトリロのパレットに描かれた風景画は、彼の絵画作品そのもの。これは笠間日動美術館のパレットコレクションのきっかけになった作品で、もともとはユトリロが画商ペトリデスに贈ったものだそうです。
薄いグリーンの壁のスペースに、海外作家のパレットと絵画が並ぶ(1階)
パレット サルバドール・ダリ
2階の展示室は、愛知県にゆかりのある現在活躍中の画家や、近現代の有名作家の作品が並びます。馬をモチーフとした作品が多い加藤助八のパレットには、やはり馬の絵が。遠藤彰子のパレットには、立体のワニが飾られています。また、東郷青児は裸の女性など、それぞれ絵画作品に見られる色彩や筆致の特徴がよく表れています。
パレットの形や大きさはさまざまで、一般的な楕円形や長方形、持ち運びに苦労するような大きなものから二つ折りにできる小さなサイズまであります。木村忠太のパレットは60.0×76.0(センチ)と巨大な板で、どのように使っていたのかと思うほど。パレットの片側に寄せられた絵具は、こんもりとした小山のようです。素材も、一般的な木製とは限りません。国内外でスケッチをすることが多かった斎藤三郎は、スケッチブックの紙をパレットとして使っています。先に挙げたマティスも同様に紙。パレットに置かれた絵具や描かれた絵・文字だけでなく、パレットそのものにも目を向けてみると、また違った側面が見えてくるはずです。
2階展示室。椅子に座ってゆっくり鑑賞できる
「静物(鼓)」北蓮蔵
これだけ多くの画家のパレットを、一度に見られる機会はなかなかありません。パレットと絵画をあわせて観ることで、画家たちの素顔に触れ、新たな魅力や感動を味わえることでしょう。
「実る柿」安井曾太郎(1937年)
パレット 安井曾太郎
本展では期間中、講演会やワークショップ、ロビーコンサートなども行われています。また、かわら美術館本来のテーマである「瓦」については、ぜひ3階の常設展示室へ。常設展「瓦文様とやきものの美」が開催されています。中国から朝鮮半島を経て日本に伝わった瓦の歴史、日本での瓦の発展と変容の歴史、そのほか美しく施されたさまざまな文様を紹介しています。身近にありながら実はよく知らない瓦。美術館のゆったりした空間で、じっくり鑑賞してみてください。
ミュージアムショップで販売中のパレット型ジンジャークッキー(左)。右は、石のようなラムネ
千石船のイメージでデザインされた美術館建物にあわせ、レストランから見える森前公園は海原をイメージ
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インフォメーション
愛知県高浜市は、日本最大の生産量を誇る“三州瓦”の中心的な産地です。このことから、かわら美術館は1995年“かわら”をテーマに、地域の芸術文化活動の拠点として開館しました。博物館ではなく美術館としたのは、瓦を美術的に鑑賞してほしいという思いから。国内外の瓦とやきものを主に、それらに関連した美術品(絵画、版画、浮世絵、書、写真など)を収集し、常設展や企画展を通して紹介しています。陶芸や絵本原画、平和などに関する特別展を多く行っているのも特徴です。また、陶芸教室を開き、やきものを作る楽しさも伝えています。
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●アクセス
愛知県高浜市青木町9-6-18
TEL 0566-52-3366
名鉄三河線「高浜港」駅下車、徒歩10分(名鉄名古屋本線「知立」駅またはJR東海道本線「刈谷」駅で、名鉄三河線「碧南」行に乗り換え)
詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.takahama-kawara-museum.com/
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