女性芸術家の軌跡をたどる〜名古屋ボストン美術館「アートに生きた女たち」展

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女性が表舞台に立ち、活躍することも珍しくない時代となりました。しかし、まだまだ男性が主流だと言わざるを得ないのが現状でしょう。芸術の世界だけを切り取ってみても、女性が男性同様に創作活動に取り組めるようになったのは、つい半世紀ほど前のことです。 家事や子育てに専念するのが当たり前。まともに美術教育を受けることさえ困難。そのような時代においても創作活動を続け、独自の道を切り拓いた女性芸術家は思いのほか少なくありません。

 

名古屋ボストン美術館「アートに生きた女たち」展では、そんな女性芸術家たちに光を当て、近代化が進み始めた1860年~1960年まで100年間の軌跡をたどっています。ボストン美術館のコレクションからの絵画に加え、陶磁器やジュエリーなど日本初公開作品を含む、多彩な作品が79点揃っているのも見どころの1つです。

 

総合金山駅の南口を出てすぐ右手。ビルの3F から5Fが美術館になっている

 

絵画と装飾品などを分けずに展示。訪れる人たちの興味をひく工夫がなされている

 

本展は、さまざまな視点から作品を見ていくために、全体を「プロローグ+5つの章」に分けて構成。それぞれにテーマを設けて紹介しています。

 

まず<プロローグ>では、フランスの画家ルブランによる肖像画を見ることができます。ルブランはマリー・アントワネットお付きの画家で、女性を美しく描くことを得意としていたため、宮廷の女性たちから愛され活躍しました。画家としての腕だけでなく、政治的な才能もあったようで、のちの女性芸術家たちのお手本と言われています。

 

<プロローグ>より マリー・ルイーズ・エリザベス・ヴィジェ=ルブラン
《若い女の肖像(ウォロンゾフ伯爵夫人?)》1797年頃 油彩・カンヴァス 82.2 × 70.5 cm
Robert Dawson Evans Collection 17.3256

 

<第一章>より エレン・デイ・ヘール《自画像》1885年 油彩・カンヴァス 72.39 × 99.06 cm
Gift of Nancy Hale Bowers 1986.645

 

<第一章>のテーマは、「女性芸術家の肖像」。女性芸術家自身がモデルとなった作品が紹介されており、それらを通して、彼女たちがどうとらえられ、また同時にどうありたいと願っていたのかを探っています。どれも彼女たちの自信や強い意志を感じさせるものばかりですが、中でもアメリカの画家ヘールの《自画像》は印象的。こちらを見つめる挑発的な目線に惹きつけられます。

 

続く<第二章>は「芸術におけるパートナーシップ」。ここでは、社会的制約の大きかった女性芸術家たちの理解者となる男性芸術家の存在に注目し、それぞれの作品の魅力に迫っています。話だけではなかなか分かりづらいその関係性も、作品を見てみると、いかに互いに才能を認め合い、作品にも影響し合っていたのかを感じ取ることができるでしょう。

 

<第二章>より ベルト・モリゾ《器の中の白い花》1885年 油彩・カンヴァス 46 × 55 cm
Bequest of John T. Spaulding 48.581

 

エドゥアール・マネ《果物籠》1864年頃 油彩・カンヴァス 37.8 × 44.4 cm
Bequest of John T. Spaulding 48.576

 

<第三章>の「女性芸術家と主題」も興味深いテーマです。当時、最も権威があるとされていた歴史画を描くには、ヌードモデルのデッサンが不可欠でした。しかし、女性はヌードデッサンが禁止されており、この主題に取り組むことができませんでした。結果、女性たちは身近な風景や静物、子どもを中心とした人物を多く描き始めます。これらの作品は「女性らしい」として肯定的にとらえられ、高い評価を受けるようになりました。

 

<第四章>より サタデー・イヴニング・ガールズ・クラブのポール・リビア製陶所
装飾:サラ・ガルナー《ボウル》1911年 施釉陶器 12.7 × 29.8 cm
Gift of Dr. David L. Bloom and family in honor of his mother, Sara Galner Bloom 2007.370

 

<第五章>より メリー・レンク《「枝分かれする」櫛》1967年 銀、パール 18.4 cm
Gift of Joan Pearson Watkins in honor of C. Malcolm Watkins 1986.912

 

そして<第四章>「女性とデザイン」と<第五章>「女性と抽象」。19世紀後半ごろから、徐々に女性の活躍の場は広がっていきます。デザインの分野では、アーツ・アンド・クラフツ運動によって「生活の中に美を取り入れる」という考え方が普及。これまで絵画などに比べて劣るとされていた装飾にも、芸術的価値が認められるようになりました。また、日用品へのデザインの需要も高まり、それらを普段使用する女性の感性が求められるようになったのです。イーディス・ゲリアーらが統率していたサタデー・イヴニング・ガールズ・クラブのボウルやマグカップなどは、今でも十分通用するかわいらしいデザインで驚かされます。さらに、20世紀にかけて女性芸術家たちが積極的に取り入れた「抽象化」。目に見えない概念を、いかに芸術として表現すべきか。この流れは、男性・女性といった性別の障壁を徐々に低くしていったと言えるでしょう。

 

展示作品から肖像画2点をパネルに。顔を当てはめ、2人になりきってみよう

 

絵画の中の女性たちが着ているような、衣装を身につけられるコーナーもある

 

「アートに生きた女たち」展は、9月29日まで。女性芸術家自身についてはもちろん、彼女たちを取り巻く人々や時代背景なども知ることができ、作品への理解が深まります。何度足を運んでも、新しい発見があるに違いありません。

 

Photographs © 2013 Museum of Fine Arts, Boston. All rights reserved.

 

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インフォメーション

名古屋ボストン美術館は、米国ボストン美術館の姉妹館として1999年4月にオープン。ボストン美術館の優れたコレクションを恒常的に紹介する、わが国唯一の施設です。日本の文化振興とともに、日米文化交流の進展に寄与することを目的としています。

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●アクセス

名古屋市中区金山町1-1-1
TEL 052-684-0101
JR東海道線・中央線、名鉄名古屋本線、地下鉄名城線「金山」駅下車 南口前

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.nagoya-boston.or.jp/exhibition/list/women-201305/outline.html

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