奥多摩で日本の美を堪能できる「櫛かんざし美術館」

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今回ご紹介しますのは、緑豊かな東京・奥多摩にある「櫛かんざし美術館」です。
青梅駅でハイキングや山登りに向かう出で立ちの人々に混ざって奥多摩線に乗り換え、美術館最寄りの沢井駅を目指します。沢井駅はのどかな雰囲気の無人駅で、降り立った瞬間からちょっとした旅行にでも来た気分になります。駅から美術館に向かう10分の道のりも、眼下の川を眺めながら吊り橋を渡り、舗装された山道を上っていくので、とても東京にいるとは思えない清々しさを体感できます。

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美術館最寄りの沢井駅は、のどかな佇まいの無人駅

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吊り橋から見る山と川の景色は抜群!

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櫛かんざし美術館では、春夏秋冬の年に4回展示品を総入れ替えしていて、12月2日までは「秋の展示」をしています。櫛やかんざしの文様にも四季があり、秋は菊や紅葉、月がモチーフになっている品々を見ることができます。のどかな環境に佇む美術館で、今よりもっと女性に愛用されていた時代の貴重な髪飾りに囲まれると、贅沢な非日常の世界に紛れ込んだようです。

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大きな櫛が印象的な外観の「櫛かんざし美術館」

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館内ロビーからの眺望もなかなかのもの

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展示室は時代ごとに分かれていて、順に見ていくと髪飾りの変遷がわかります。
日本女性の髪型は長く垂らした垂髪が平安時代から長く続いていましたが、江戸時代になると髪を結う習慣が現れました。最初は簡素なものでしたが、江戸中期になると櫛に装飾が施されるようになりかんざしや笄(こうがい)も加わり、女性の頭髪はより華やかになりました。

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江戸時代のものを展示している第1展示室には、木に漆を塗り金銀を加えたもの、螺鈿をはめ込んだ蒔絵、べっ甲や象牙細工の品々が並び、当時の職人の技術に圧倒されます。
江戸時代の展示品の中でもユニークなものが「二枚櫛」です。二枚櫛というだけあり、二枚で一対になっている櫛です。なぜ二枚なのか。それは、絵が連続していたり、同じ場所を描き、時間の経過を表しているのです。そうなるともう美術品の域!
髪型が派手で多様化してきたのに伴いつくられたもので、一人で二枚並べて挿したり、仲の良い友だちと一枚ずつ挿して使われていたようです。男性はよく見ないと気付かないかもしれませんが、いつの時代も女性の目は鋭く敏感なもの。さりげないこだわりを細部にまで発揮し、女性たちは楽しんでいたのでしょう。

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展示品の細部までじっくり見て、職人の技を堪能してください

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時の流れを表現したり、連なった模様が施されている「二枚櫛」

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花魁(おいらん)の髪飾りもあり、京都の島原太夫と江戸の吉原花魁の品々を並べて展示してあります。都があった京都のものは華やかなのに対し、江戸のものは落ち着いた雰囲気。比較して見るのも楽しいですよ。
髪飾り以外での注目は「筥迫(はこせこ)」です。現在では七五三や花嫁さんの衣裳の単なる装飾道具の一つになっている筥迫ですが、もともとは御殿女中たちが身の回りのものや懐紙を入れて懐に挟んで使用していました。当時としては珍しい高価なビロードなどの生地に刺繍が施されていて、実用性と装飾の要素を兼ね備えていました。保存状態がよく豪華な刺繍はそのまま残っていて、希少価値の高いものがずらりと並んでいます。大きさは、すごく厚みのある長財布といったところ。胸元に入れておくにはジャマだったのでは??と思ってしまいますが、これだけ豪華でちゃんと物も収納できるのなら、バッグがなかった時代なので、とても便利なものだったでしょう。

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続いて、明治~昭和期のものを展示している第2展示室へ。
こちらの展示品の中で珍しいものは、「秋田花嫁のかんざし」です。大ぶりで豪華なのが特徴で、3点一組がほとんどです。その昔、秋田地方の富裕層の結婚式は、三日三晩かけて行われていました。そのため、1日目は金、2日目は銀、3日目はべっ甲というように、毎日違うものを飾って見せていたからです。髪飾りだけでなくきっと衣裳も変えていたでしょうし、花嫁道具も立派だったはず。髪飾りからいろいろなことが想像できます。

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小物を収納し、懐に挿していた「筥迫」

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豪華すぎて重そうな「秋田花嫁のかんざし」

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お誂えの一点ものだった髪飾りは、時代の流れとともに大量生産されるようになり、店頭で販売されるようになりました。分業で幾人もの職人の手を経てつくられた味のある櫛と、機械でつくられた櫛目がきれいに揃っている櫛の違いにも着目してみてください。
紅葉のシーズン、櫛かんざし美術館周辺は大勢の観光客でにぎわいます。秋の行楽日和には遠足気分で奥多摩を訪れ、櫛かんざし美術館で日本の美を堪能してきてくださいね。

 

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インフォメーション

櫛かんざし美術館は、収集家・岡崎智予さんのコレクションを一括継承し、さらに新規の収蔵品を加えて1998(平成10)年に開館した美術館です。江戸時代からから昭和までの櫛とかんざしを中心に、紅板、筥迫、かつら、矢立など4000点におよぶ収蔵品を有しています。1702(元禄15)年創業で、「澤乃井」で知られる地元の蔵元・小澤酒造の関連会社が運営しています。

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●アクセス

東京都青梅市柚木町3-764-1
TEL 0428-77-7051
JR青梅線「沢井駅」より徒歩10分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.sawanoi-sake.com/kushi/

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