タイトルにある“野良犬黒吉”とは、いったい何かわかりますか?
幅広い年代から愛されている、モノトーンのキャラクター「のらくろ」の本名です。漫画本やテレビアニメで楽しんだ人たちも多いのではないでしょうか。今回は、のらくろの作者・田河水泡(たがわすいほう)が、幼少期から青年期までを過ごした東京都江東区森下にある「田河水泡・のらくろ館」に行ってまいりました。
といってもわざわざ目指して行ったわけではなく、夏まつり見物に出掛けたら、町の一角がのらくろ一色で「!!!」とビックリし、通りを歩いていくと辿り着いたのが田河水泡・のらくろ館だったのです。
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田河水泡・のらくろ館へ行くまでにある高橋商店街は、「高橋のらくろ~ド」と称し、商店街のいたる所でのらくろに出会えます。シャッターが閉まっていても、そこにはのらくろが描かれているので、のらくろが走り回っている商店街に寂しい雰囲気はまったくありません。シャッターだけでこんなに楽しめるのなら、お店が開いていたらもっと賑やかに違いありません。商店街のお店では、お煎餅などお土産にもなるのらくろグッズが売られています。
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高橋のらくろ~ド商店街
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シャッターが下りていても、愛嬌のあるのらくろが出迎えてくれます
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寝たり、笑ったり、さまざまな表情ののらくろを楽しみながら商店街をまっすぐ進むと、田河水泡・のらくろ館の入っている江東区森下文化センターに行きつきます。「こうとう文化親善大使」にも選ばれているほど、のらくろは江東区の顔なんですよ。
文化センターの1階いちばん奥に田河水泡・のらくろ館はありますが、その手前には、漫画資料の展示と閲覧コーナーののらくろ広場があります。のらくろはもちろんのこと、田河水泡の著作、ゆかりのある作品、話題の作品、マンガ評論書を自由に読むことができます。
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田河水泡・のらくろ館の入っている森下文化センター
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入場無料でのらくろワールドをたっぷり満喫できます
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のらくろは天涯孤独の野良犬ですが、明るく元気な性格。猛犬連隊の二等卒からはじまるストーリーは、一等卒、一等兵と着実に昇進し、大尉にまで登りつめ、戦後は喫茶店のマスターになり、結婚もして大団円の結末を迎えます。
子どもの頃、のらくろをテレビアニメで数回見た記憶があるものの、兵隊の格好をした犬が出ていたのを覚えている程度。ここで本を読んではじめて、のらくろのストーリーを知ってスッキリしました。ビデオも流しているので、それを見て「そういえば、のらくろの声優は大山のぶよだった!」と思い出したり、忘れていた記憶が次々とよみがえります。
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また、のらくろ広場の壁面には、水泡の弟子や交流のあった漫画家たちの色紙が展示されています。長谷川町子や手塚治虫、ちばてつや、藤子不二雄などそうそうたるメンバーが、自身のキャラクターと一緒にのらくろも描いています(例えば、ドラえもん・ハットリ君・パーマンがのらくろを胴上げしていたり、鉄腕アトムとのらくろが空を一緒に見上げていたり)。漫画家それぞれの特徴が反映されたのらくろは、どれもオリジナルとは違う愛らしさがあります。これだけでも十分楽しめる豪華な展示です。
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のらくろ広場の壁面には、水泡と交流のあった漫画家たちの色紙が展示されています
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漫画も自由に読むことができるので、ついつい長居してしまいそう
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田河水泡は明治32(1899)年に生まれ、昭和6(1931)年から『少年倶楽部』で「のらくろ二等卒」の連載をはじめました。このとき水泡は32歳。昭和55(1980)年の「のらくろ喫茶店」で終了したとき、水泡は81歳になっていました。半世紀にわたり、のらくろを愛し描き続けていたのです。
しかしこれで終わりではありません。実は、水泡はのらくろ終了後も、違う形でのらくろを描いています。旅先でのスケッチ画にのらくろが登場しているのです。自然風景の中に、よく見ると黒い犬の姿があります。どこに行くにも、水泡の心には半世紀を共に過ごした同志のらくろが傍にいたのでしょう。スケッチからは、水泡とのらくろの穏やかな晩年が見てとれます。
館内では、そうした水泡の生涯を年表や写真を通して知ることができます。愛用の書斎机や道具類を置いて再現した仕事場もあり、ついさっきまで水泡がそこに座っていたような温かい雰囲気が感じられます。
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秋のお散歩日和に、ぶらぶらと高橋のらくろ~ドを散策し、田河水泡・のらくろ館まで足をのばしてみてはいかがでしょうか。漫画を読みだしたらきっと止まらなくなるので、時間に余裕をもってお出掛けくださいね。
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(左)のらくろの成長過程を短時間で知ることができるストーリー展示
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(左)再現された仕事場は、さっきまで水泡が座っていたかのよう
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インフォメーション
田河水泡・のらくろ館では、後の日本の漫画界に多大な影響をもたらした田河水泡の生涯、代表作の「のらくろ」を詳しく紹介しています。平成元年(1989年)、水泡が90歳で没後、遺族から作品や書斎などの遺品が江東区に寄贈され、平成11(1999)年、田河水泡・のらくろ館は開館しました。
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●アクセス
田河水泡・のらくろ館
東京都江東区森下3-12-17 江東区森下文化センター内
TEL 03-5600-8666
地下鉄新宿線・大江戸線「森下駅」、地下鉄大江戸線・半蔵門線「清澄白河駅」より徒歩8分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.kcf.or.jp/morishita/norakuro.html
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