Q:美味しいお茶はどんな水色をしているのでしょうか?
A:お茶を淹れた時の浸出液を水色といいますが、煎茶の場合には、明るい黄緑色で澄んで、かつ濃度を感じさせるものが良いとされています。水色もお茶の出来を見極める大切なポイントです。
お茶が緑色である理由
お茶の生葉は緑色をしていますが、これは葉緑素(クロロフィル)によるものです。クロロフィルは、生葉のまま放置しておくと、葉に含まれる酸化酵素により酸化されて変色します。しかし、お茶を作る時に、釜で炒ったり蒸したりして加熱することで酸化酵素の働きが止まります。これを「殺青(さっせい)」と言います。殺青することで、出来上がりのお茶には緑茶特有の色が残ります。
同じチャの葉から紅茶や烏龍茶も作られますが、日本の緑茶とは異なり、茶の色は濃い褐色です。これは殺青をしないために、酸化酵素が働いて褐色の茶になるためです。
お茶の水色
お茶を淹れた時の浸出液の色を「水色」と言います。お茶の出来を見極めるには、水色も重要な要素です。
煎茶の水色は、明るい黄緑色で澄んで、かつ濃度を感じさせるものが良い水色とされています。赤みがあると水色が悪いとされます。
番茶は製茶過程でカテキン類が多少酸化するため、水色がやや赤みを帯びていても問題にはなりません。焙じ茶は番茶などを高温で焙煎したものなので、水色は褐色になります。良い紅茶の水色は赤橙色です。烏龍茶は発酵度の低いものは緑茶に近い黄色、発酵度が高ければ紅茶に近い赤色をしています。
お茶の香り
お茶には300以上の香り成分が含まれていますが、全てが解明されているわけではありません。お茶特有の爽やかなすがすがしい香りは、膨大な香り成分が複雑に絡み合って生み出されるハーモニーなのです。
生葉には「青葉アルコール」などの青臭い香りの成分が多くあります。これらが新茶の香りの成分なのです。製茶過程で生葉を蒸すと青臭い香りが適度にやわらぎます。この爽やかな若い芽の香りに、加熱により生じる「ピラジン類」などの香ばしい香りが加わったものが煎茶の香りで、両者のバランスがとれている煎茶が良いとされています。
玉露には、良質の青海苔のような香り成分「ジメチルスルフィド」が多く含まれています。この香りは遮光して栽培することで生じるもので「覆い香」と呼ばれています。
緑茶と紅茶、烏龍茶の香り
緑茶や紅茶、烏龍茶は、もとは同じチャの樹を原料にするのですが、それぞれは特有の香りを持っています。それは製造工程が異なるからです。
緑茶は生葉を短時間で蒸したり炒って加熱し酸化を止めるので、緑茶らしい爽やかな香りが保たれます。これに加熱による香ばしさが加わったのが緑茶の香りです。
紅茶や烏龍茶は緑茶とは違い、生葉を一旦萎れさせます。こうすることで、酸化酵素や香気成分を生成する酵素の働きを促します。これにより特有の香りが生まれます。紅茶はバラや果物の香りがするものが良いとされ、烏龍茶は花の香りが強いものほど上等とされます。紅茶や烏龍茶に比べると、日本の緑茶は香りが弱く、香りより味を楽しむお茶と言えるでしょう。