Q:お茶は苦くて渋いのに、どうして美味しいのでしょうか?
A:うま味や甘味もあってバランスがとれることで、苦味や渋味が不快なものでなく、逆にお茶特有の爽やかさ、豊かな味わいを生むからです。
美味しいお茶とは
一般に味の要素には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味、渋味などがあります。お茶の場合、うま味、甘味をもたらす成分は、うま味の強いグルタミン酸や、お茶特有のテアニンなどのアミノ酸です。
また、食品には珍しく味のベースになっているのが苦味や渋味です。古来より毒物には苦いものが多く、不快な味とされています。しかし、お茶特有のさっぱりした苦味は、不快ではなく爽快感や後味に甘みを感じさせます。
この苦味・渋味をもたらす成分の代表はカテキン類やカフェインです。カテキン類は苦味と渋味を持つのに対して、カフェインはさっぱりとした軽い苦味を感じさせます。ベースとなる苦味・渋味に、アミノ酸や糖類によるうま味と甘味が加味されて、お茶の味が構成されています。苦味・渋味・うま味・甘味という4つのバランスによって、お茶の味は決まるのです。
お茶の種類による味の違い
お茶の栽培や製造方法が違うと、それぞれに個性的な味わいが生まれます。煎茶は渋味とうま味のバランスが良く、さっぱりとした後味のものが良いとされています。上級の煎茶は一番茶を原料にしますが、アミノ酸を多く含むので、豊富なうま味とさっぱりした苦味をバランスよく味わえます。一方、下級品は二番茶以降の茶葉を多く使うために、アミノ酸が少なくカテキン類が多くなる傾向があります。それで、うま味が少なく、苦味・渋味が感じられるようになります。
玉露は上級煎茶以上にアミノ酸やカフェインが多く、カテキン類が少なくなります。そのため、深いうま味とわずかな苦味が調和した、まろやかで濃厚な味を楽しめます。
番茶は硬くなった葉や茎を加工したお茶で、アミノ酸やカフェイン、カテキン類は煎茶より少なく、味が淡白です。番茶を高温で焙煎して作る焙じ茶はさらに味が薄くなりますが、その代わりに焙煎による香ばしい味と香りがつきます。
玉露や上級煎茶にも苦味や渋味成分はあるのですが、飲んでもあまり感じません。一般にこうした上級なお茶は温度が低めのお湯で淹れるために、苦味・渋味成分は溶け出しにくいからです。
お茶のカテキン、タンニン
お茶の苦味・渋味の素となる成分はカテキン類です。抗酸化作用などで近年注目されていますが、お茶はカテキン類を豊富に含む食品の代表なのです。
お茶に含まれるカテキン類は4種類ありますが、最も多いのはエピガロカテキンガレート(EGCg)。お茶のカテキン類はいずれも冷たい水には溶け出しにくい性質があるので、冷茶では苦味や渋味が少なくなります。
かつてお茶の苦味や渋味の素をタンニンと呼んでいました。タンニンとは植物に含まれる渋味のある物質の総称です。お茶の化学的な研究が進む中で、徐々に含まれる成分の化学構造が明らかになり、お茶のタンニンの大部分はカテキン類であることが分かってきました。カテキンを個別に測定するなど研究は進み、様々なカテキンも見つかっています。こうした研究の進展により、タンニンという総称を使うことは無くなってきました。
お茶のカフェイン
緑茶や紅茶、烏龍茶は、もとは同じチャの樹を原料にするのですが、それぞれは特有の香りカフェインは苦味をもたらすとともに、眠気を覚ます作用のある成分です。コーヒーに含まれていることが知られていますが、お茶にもカフェインは含まれています。カテキン類ほど苦味は強くありません。お茶からカフェインを除くと、お茶特有のさっぱりした心地よい苦味が失われることから、カフェインがお茶の大切な味成分であることがわかります。
お茶のテアニン、アミノ酸など
お茶のうま味や甘味の素になっている成分はアミノ酸類です。玉露や抹茶、上級煎茶などに多く含まれています。
お茶に含まれるアミノ酸類は、テアニン、グルタミン酸、アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸、セリンなどです。このうち特に多いのがテアニンで、お茶のアミノ酸の半分を占めます。チャの樹を栽培する時に覆いをかけて遮光したり、チッソ質肥料を施したりすることで増える成分です。最近の研究ではテアニンは、うま味よりも甘味を増すのに強く関わっていることがわかってきました。
うま味が強い成分と言えばグルタミン酸です。昆布に含まれるうま味成分として有名で、うま味調味料の主成分になっています。テアニンの30倍もの味の強さがあります。