(左)中目黒駅からも見える、駅近の「郷さくら美術館 東京」
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都内の桜の名所といえば千鳥ヶ淵、上野公園などが思い浮かびますが、今回ご紹介する「郷(さと)さくら美術館 東京」のすぐそばを流れる目黒川も、桜の有名スポットです。約4㎞にわたって桜が植えられていて、お花見の時期には川沿いを散歩しながら桜を楽しむ人の姿が数多く見られます。
今春オープンしたばかりの郷さくら美術館 東京は、“さくら”と冠していることからもわかるように、春だけでなく、一年を通じて絵画で桜を楽しめる美術館です。
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既存のオフィスビルをコンバージョン(用途転換)した同美術館は、外観の壁面に焼き物の町・岐阜県土岐市で製作した、約1000枚もの陶板を積み上げているのが特徴です。陶板一枚一枚には、桜をモチーフにした同美術館のロゴが刻まれています。
館内は3フロアからなり、フロアを移動すると異なる世界観が広がる、わかりやすい3部構成になっています。もともとオフィスだったので、一般的な美術館と比べると天井高は及びませんが、1階は黒を、2・3階は白にも見えるやさしい薄桃色の壁面にしていることで、空間に広がりが感じられます。また、足元は絨毯が敷かれているので、かしこまった美術館ではなく、どこかのプライベート空間に招いてもらったような、贅沢な気分でゆったりと絵を鑑賞することができます。
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(左)オフィスビルをコンバージョンしてできた美術館の外観は特徴的
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(左)壁面には桜がモチーフの陶板が使用されています
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昭和生まれの作家を中心とした日本画を展示する、現代日本画の専門美術館の同館は、約200名の作家の手による風景画、人物画、動物画など、多彩な作品、50号以上の大きなサイズの作品を中心に収集しています。いま現在、制作活動を行っている日本画家の支援にも繋がることを願うとともに、広く一般の方々に現代日本画の魅力に触れてもらいたいと同館では考えています。
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昭和生まれの作家が中心ですから、展示作品の作者のほとんどが現役で創作活動されています。だからこそ可能な同美術館のユニークな展示手法(というと大げさですが…)があります。作品の隣に作者のコメントを掲示しているところです。どうしてこれを描くことにしたのか、何に苦労したのか等々、製作秘話が記されているのです。現存している作者だからこそ!ですよね。
石井正伸館長によると、「作家の発した言葉を載せることで、作品をより深く知り、読み解いていただきたい」からだそうです。確かに作家のコメントがあることで、はじめて現代日本画を目にした人でも、作家も作品もより身近に感じられ、楽しくなってきます。
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(左)松村公嗣『想』 1993年 紙本着彩 100号(郷さくら美術館蔵)
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例えば、『想』(松村公嗣、1993年、100号)のコメントはこうです。
「バレリーナに実際アトリエに来てもらい、いろいろなポーズをとってもらったのですが、何となくピンと来ませんでした。少し休憩してもらった時のポーズが大変おもしろく、思いがけないところで自然なポーズに出会いました。
松村公嗣」
このコメントがあるとないとでは、バレリーナがガニ股で座っているこの絵に対する捉え方が変わりませんか?コメントを読むと、疲れて休んでいるモデルのバレリーナ、その姿を見付けて嬉々としている作家、どちらの気持ちもわかり、また客観的にその光景も目に浮かびます。
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まずは絵を観て、次にコメントを読んで、再度絵を観る。2回楽しめるこのお得感!何より1回目と2回目では自分の着目点が変わり、違う感じ方をしているのもまたおもしろいのです。
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同美術館では、9月23日まで「現代日本画の精華 Part2」を開催しています。
1階は第1部「桜の饗宴」(常設展示)。来館者に1年を通じて満開の桜を日本画で楽しんでいただくという基本コンセプトに忠実に、まさに桜だけが展示されています。100号の大作もあり、桜が大好きな日本人にはたまらないフロアです。
2階は第2部「異郷の人々」(人物画)で、3階は第3部「悠久の世界」(風景画)です。日本画はモチーフが日本の物のことをいうのではなく、技法を指します。そのため、日本画表現の新たな可能性を求めて、昭和生まれの作家たちは新しいモチーフを求めて海外にも足を伸ばしています。彼らが旅先で出会った人々や風景を描いた絵を、2~3階では展示しています。
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100号の大作が並んで圧巻の、第1部「桜の饗宴」
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日本各地の桜を、日本画で一年中楽しめます
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第2部「異郷の人々」(人物画)では、国内外の人物の様々な表情が描かれています
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第3部「悠久の世界」(風景画)で目を引くインドのタージ・マハールがモチーフの大作は、『星夜燦々』(西田俊英、2002年、屏風)
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「日本画は平面的なので、背景をどうするかに作家の特徴が出ます」と石井館長。
“日本画”と聞くと、馴染みのない人には難しそうに思えるかもしれませんが、背景に着目して鑑賞したり、作家のコメントを読みながら、現代日本画に親しんでみてください。
作家のコメントなどの親切な展示から、“日本画の魅力を伝えたい!”という思いが伝わってくる郷さくら美術館 東京は、一度行ったら誰かに教えたくなる美術館です。
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インフォメーション
郷さくら美術館は、現代日本画の専門美術館として2006年10月に福島県郡山市に開館、続いて2012年3月に東京・中目黒に東京館をオープンしました。現在500点以上の所蔵品があり、両館では企画展や季節にあわせて収蔵作品を一般公開しています。
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●アクセス
東京都目黒区上目黒1-7-13
TEL 03-3496-1771
地下鉄日比谷線・東急東横線「中目黒駅」より徒歩5分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.satosakura.jp/tokyo/
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