大正から始まった“カワイイ”を考える「弥生美術館」

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東京・文京区、東大のそばにある「弥生美術館・竹久夢二美術館」に行ってきました。
この2つの美術館は館内で繋がっていて、弥生美術館を見た後で竹久夢二美術館へ行く順路になっています。弥生美術館には、明治末から戦後にかけて活躍した挿絵画家の作品が展示されていますが、そこから続く竹久夢二美術館は、大正ロマンの画家で、美人画を多く描いていたことで知られる夢二の世界が広がっています。終始うっとりしながら、両美術館を堪能してきました。の文化を永く後世に伝えていくためにつくられたのが、上野公園にある「下町風俗資料館」です。

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弥生美術館では、7月1日まで『大正から始まった日本のKawaii展~ファンシーグッズを中心に~』を開催しています。2012年は、大正元年から数えて100年目の年にあたります。「カワイイ」という言葉が海外でも通じるほど、日本の「カワイイ」は世界から注目されるようになりました。日本発祥の文化として注目されている「カワイイ」の100年の歴史を、ファンシーグッズを通して知ることができます。

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2館一緒に堪能できる弥生美術館と竹久夢二美術館

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「カワイイ」ファンシーグッズがたくさん並んでいる館内

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ファンシーグッズの元祖は、大正ロマンの画家・竹久夢二です。大正3年に彼がはじめた店からアール・ヌーヴォー調の草花図案をほどこした千代紙や半襟などが販売されると、新しい感覚で評判になりました。昭和に入ると、高畠華宵や佐藤漾子など抒情画家の便箋や封筒が流行り、松本かつぢの「くるくるクルミちゃん」は、少女文化で最初のグッズ・キャラクターとなってポチ袋やふろくに描かれました。戦後の駄菓子屋では蔦谷喜一のぬり絵が人気を博し、昭和30年頃になると内藤ルネ、田村セツコ、わたなべまさこ、その後は水森亜土も登場して、カワイイ絵付きのマグカップやペンケースが少女の生活を彩りました。昭和50年代にハローキティなどサンリオのキャラクターグッズが流通するようになって、日本国中がカワイイもので埋め尽くされるようになったのです。

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色っぽすぎる高畠華宵の便せんとしおり

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男の子と女の子がキスしている水森亜土のハンカチ

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上記に9人の画家の名前を挙げましたが、その中で皆さんの記憶に残っているのは誰の絵でしょうか?
美肌茶房編集部の私は、ご本人の特異なキャラクターが印象的なのもあり、だんぜん水森亜土さんです。展示作品の解説によると、彼女の絵は日本の「カワイイ」に新風を吹き込んだそうです。新風とは、「カワイイ」に「セクシー」を取り入れたのです。
水森さんは、男の子と女の子がチュッとキスしたり、半裸に近い格好でおしりを見せたり、ちょっとエッチなシーンをよく描いていました。確かに!カワイイ&セクシーですね。
展示作品の解説はどれも長いですが、ぜひじっくり読んでみてください。解説抜きで、ただ作品を流し見するだけではモッタイナイ情報が、このほかにもたくさん載っていますから。

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「可愛い」とは何かについて書いている解説もありました。
それによると、「未成熟の魅力・美しさ」であり、その属性として挙げられるのが「小さい」「明るい」「軽やか」「曲線的」などで、これらは攻撃には適さない要素。「可愛い」は「攻撃的ではない」という安心感に繋がり、安心できる親しみやすいものとして大衆に愛されてきたということです。

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また、興味深いのは、大正11年生まれの人から昭和60年生まれの人まで、世代の違う10人が言った「可愛い」という言葉に抱くイメージと、漢字、ひらがな、カタカナのうちどれで考えているのか、その回答の展示です。
それを見ると、100年の間にこれほどニュアンスが変わった言葉はほかにないだろうと驚きます。展示物の解説も、時代背景や状況に応じて、「可愛い」「かわいい」「カワイイ」「Kawaii」がちゃんと使い分けられています。そこにも注目してみてください。
「カワイイ」という言葉を改めて考えながら展示を見ると、見終ったときに気付き、反省することがあります。日常、なんでもかんでも「カワイイ」という言葉で片付け、便利な言葉として使っていたことを。

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熱心に見る女性が多かった竹久夢二美術館

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竹久夢二美術館では「『セノオ楽譜』デザインと京都時代の夢二を追って」を7月1日まで開催中

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竹久夢二美術館にも行き、両館内をすべて見終ったら、次はミュージアムショップをのぞいてみてください。ミュージアムショップは1階の受付そばにあり入館したらすぐ目に入ってきますが、素通りして、お楽しみは最後にとっておきましょう。
竹久夢二グッズがいちばん充実していますが、高畠華宵や松本かつぢグッズ、その他の画家の絵ハガキやここでしか購入できないオリジナルグッズもたくさんあるので、見ていたらどれも欲しくなること間違いありません。

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そして、美術館を出たら、隣接する「カフェ港や」にも立ち寄ることをおすすめします。2階の席に座って夢二ブレンドを飲みながら、一人、美術館で見た世界にひたったり、友達と感想をお喋りしたりするのに最適ですよ。

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コアなファンも多い美少年・美少女画で知られる高畠華宵の常設展示室

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「カワイイ」ものだらけのミュージアムショップ

 

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インフォメーション

弥生美術館は、明治末から戦後にかけて活躍した挿絵画家をはじめ、挿絵・雑誌・漫画・付録などの出版美術を展示しています。3階展示室は高畠華宵の常設展示室で、常時50点の華宵作品を公開しています。
竹久夢二美術館は、古き良き時代を思わせる夢二式美人画から、モダンな表現を試みたデザイン作品まで、幅広く大正ロマンの世界を満喫できる夢二作品を、常時約200~250点展示しています。

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●アクセス

弥生美術館
東京都文京区弥生2-4-3
TEL 03-3812-0012
竹久夢二美術館
東京都文京区弥生2-4-2
TEL 03-5689-0462
地下鉄千代田線「根津駅」もしくは地下鉄南北線「東大前駅」より徒歩7分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/

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