みどころはサザエさんだけではありません ~長谷川町子美術館「春爛漫」展

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東京・世田谷の長谷川町子美術館で4月8日まで開催している、収蔵コレクション展「春爛漫(はるらんまん)」に行ってまいりました。

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長谷川町子さんといえば、皆さんよくご存知の『サザエさん』の作者です。その長谷川さんの名が付いているところだから、過去の作品の数々を紹介している美術館だと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん『サザエさん』『いじわるばあさん』『エプロンおばさん』などの原画や、作品にまつわる展示物もあります。懐かしさから見入ってしまいますが、見どころはそれだけではありません。長谷川町子さんとお姉さんの毬子さんがコレクションしてきた、美術品が必見なのです。

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漫画が順調に売れ出し、生活に余裕もでてきた昭和30年半ば頃。絵の好きな長谷川さん姉妹は、少しずつ絵画を購入するようになりました。有名無名にかかわらず、純粋に絵だけを見て判断し、自分たちの気に入るものを選ぶ買い方でした。コレクションした作品は、日本画、洋画、彫塑、工芸品など約700点におよび、広く社会に還元しようとの想いから、昭和60年に美術館を開館。年に4~5回に分けて収蔵コレクション展を行っています。

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現在開催中の収蔵コレクション展「春爛漫」は、そのタイトル通り、春を感じさせる作品が展示されています。そのなかでも圧巻は、500号(3333×2182mm)もの絵画、福島県・三春の滝桜を描いた三栖右嗣(みすゆうじ)の「爛漫(らんまん)」です。咲き誇った桜の勢いが感じられる、迫力満点の巨大絵画です。
その両サイドには、同じく三栖右嗣の桜を描いた作品で130号(1940×1620mm)の、「水辺爛漫(みずべらんまん)」と「桜の径(さくらのみち)」が展示されています。「爛漫」を購入後、依頼して特別に描いてもらったというこの2点。「爛漫」を挟んで3点並べることで、桜の咲きはじめから終焉までを感じられるようになっています。
今春は桜の開花が例年より遅いそうですが、1階の展示室はひと足早く春爛漫。春のポカポカ陽気と、桜の開花がとっても待ち遠しくなります。

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並んで記念写真を撮りたくなる、サザエさん一家が勢揃いしている花壇

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壁一面に桜が咲き誇っている1階の展示室 

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2階展示室には、自然の根強い春の息吹を感じさせるフキノトウやカタクリを描いたものがあり、1階とは異なる春の風が吹いています。特別展示されている東山魁夷の「春を呼ぶ丘」や加山又造の「月朧」、山口華楊の「雨歇む」も見逃せません。

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著名な画伯の作品もありますが、自分たちの好みの美術品を購入していた長谷川さん姉妹。そのため、いろいろな作者のものが並んでいても、突出しているように感じるものや違和感は一切なく、統一感があります。
今回の「春爛漫」展を見て気に入られた方、居心地がよかった方は、長谷川さん姉妹と感性が似ているのでしょう。今後の収蔵コレクション展も覗いてみると、きっと楽しめること間違いありません。

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「磯野家の間取り模型」は、老若男女誰もが覗き込んで長時間離れません

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2階にある「町子コーナー」。ビデオ上映を見たり、展示パネルを見たり、原画を見たり、思い思いに楽しめる空間です

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長谷川さん姉妹の描いた作品

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いじわるばあさんの原画

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2階には「町子コーナー」もあり、漫画の原作のほか、長谷川さん姉妹作の絵画などが展示されています。サザエさんのビデオ上映がされていたり、手に取って読める漫画が置いてあったり、壁には漫画パネルが掲示されているので、中央に置かれた椅子に座って、キョロキョロあちこちに目を走らせているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

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来館者のほとんどが夢中になって覗き込むのが、17分の1サイズの磯野家の縮尺模型です。漫画、アニメで断片的に見た磯野家の各部屋がつながり、立体となって目の前にあるのです。興奮しないわけがありません。広くても家族みんなの息づかいが感じられる、古きよき時代の日本家屋のぬくもりが見て取れます。

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取材に行った日は、70代のご両親を連れた40代の女性、20代の女性同士、30代の男性、50代の女性のグループなど、さまざまな年代の方が来館していました。誰かと一緒に来て絵画を楽しんだり、漫画関連の展示で懐かしさを共有するのも良いですが、ひとりで時間を気にせずじっくり見てまわるのもおすすめです。
どんな年代の方でも楽しめる長谷川町子美術館へ、ひと足早い春を感じに出掛けませんか。

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長谷川町子さんが40年間住みなれた、桜新町の自宅近くで昭和60年に開館した「長谷川町子美術館」

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美術館オリジナルのサザエさんキャラクターグッズもたくさんある、売店の品々

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写真:(C)長谷川町子美術館

 

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インフォメーション

長谷川町子美術館は、『サザエさん』で有名な漫画家・長谷川町子さんと、その姉の毬子さんがコレクションしてきた美術品を公開している美術館です。サザエさん、いじわるばあさん等の原画、長谷川町子さんが執筆の傍ら創作した陶人形や絵画、アニメサザエさんのビデオ上映や磯野家の大型模型も展示しています。

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●アクセス

東京都世田谷区桜新町1-30-6
田園都市線・桜新町駅より徒歩7分
TEL 03-3701-8766
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。


http://www.hasegawamachiko.jp/

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