実物を見れば女性もハマる、魅惑の「刀剣博物館」

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タイトルだけをチラッと見て、「刀剣なんて興味ないわ!」とバッサリ切り捨ててほかのサイトに行かないでくださいね。あなたの周りに刀剣について話す人、詳しい人、好きな人はいますか?きっと美肌茶房読者のほとんどの人が、まだ一度も刀剣と関わったことがないのでは?!日常生活でそうそう刀剣と出合うことはありませんよね。だからこそ、この機会を逃してはモッタイナイ!未知なる刀剣の世界を、ちょっとだけ覗いてみませんか♪

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近くに住んでいても、興味がなければ行くことのなさそうな渋い外観の刀剣博物館

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刀剣博物館では、2012年5月6日まで「館蔵名刀展」と「刀装具にみる龍の世界」を同時開催しています。刀剣鑑賞初心者なのでそう感じるのかもしれませんが、静かな住宅街の中で古い建物全体が「冷やかし見学はお断り」とでも言っているかのような、重々しい空気をまとっています。
こんなところに来てよかったのかな、間違って足を踏み入れてしまったかも…と思いながら2階に上がると、受付の女性の笑顔を見てホッと胸をなでおろし、鑑賞の手引や展示品の目録など、勧められるままパンフレットをいくつかいただきます。広く一般の方に刀剣鑑賞を楽しんでもらいたいという気持ちが、パンフレットの数からも伝わってきます。

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日本刀は、手に取って(!)暗い部屋で電球のもと角度を変えながら鑑賞するのが良いそうですが、一般の美術館のような穏やかな展示照明では、日本刀の芸術性がよく伝わりません。また、すべての来場者に日本刀を持ってもらうなんてこともできません。そのため刀剣博物館では、展示している日本刀の美しさをなるべくよく見てもらえるように、展示照明の光量や角度に工夫をしていて、展示室はほんのり薄暗く、展示品はそれぞれライトを浴びています。
「このスペースにこれだけの人数が必要?!」と思うほど警備の人がいるので独りになることはありませんが、もしも独りきりにされたら…と想像するだけでも怖い、張り詰めた空気が満ちている展示室。それがほかの博物館や美術館と異なり、刀剣を展示している場所ならではの雰囲気かもしれません。

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昔の図書館のような雰囲気の2階の受付

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パンフレットいろいろ。刃文の種類のイラストなども載っていてわかりやすい

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展示室を入ってすぐのところに、ぜひじっくり見ていただきたい国宝の太刀があります。日本刀とひと口に言っても、戦闘方法や時代背景に応じて長さや幅、反りが違い、太刀(たち)、刀(かたな)、脇指(わきざし)、短刀(たんとう)などの種類があります。太刀は刃の長さが60cm以上あり、腰に差す時に刃を下に向けるのが特徴です。明石松平家伝来の『国行(来)』(鎌倉時代初期)と、福山藩阿部家伝来の『国行(当麻)』(鎌倉時代後期)が並んで展示されています。

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主任学芸員の久保恭子さんが、日本刀を鑑賞する時のポイントを教えてくれました。
押さえておきたいポイントは3つ、「姿」「地鉄(じがね)」「刃文(はもん)」です。幅の広さや厚さ、鋒(きっさき)の大きさや形、反りといった全体の姿で作られた時代がわかり、地鉄でどの流派の手によって作られ、産地はどこかがわかるそうです。
そして最後の刃文。日本刀は鉄を鍛錬し、焼き入れによって刃の部分ができますが、最も技量が必要な焼き入れの際に生じる模様のことを刃文と言います。真っ直ぐなシンプルな刃文から、大きく波打ち存在を主張する華やかな刃文まであり、その形ごとに名前までつけられています。慣れないうちはピンときませんが、いくつも見ていくうちにくっきり刃文が見えるようになり、違いがわかれば楽しくなってきます。

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決して広くはないけれど、どれも見応えがあるので見入って滞在時間が長くなります

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国宝の『国行(来)』と『国行(当麻)』。写真ではモノトーンの美しさが伝わらないのが残念

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鉄を火で熱し、水中に入れた瞬間に鉄の一部が化学変化を起こして生じる鉄の組織の結晶体を「沸(にえ)」「匂(におい)」と言います。日本刀特有の、響きが雅な鑑賞用語です。おおよそ肉眼でわかる大きさの結晶体が沸、それより細かなのが匂で、これらが集合して刃文になります。
刃文鑑賞を難なくクリアできる人は、さらにその上を目指して、沸の魅力を感じてみてください。残念ながら、私にはまだ沸はわかりませんでした…。簡単にわかるものではないようです。

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まるで富士に抱かれているような日本刀の数々。刃を下にしているのが「太刀」(手前)で、刃が上になっているのが「刀」(2番目)

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さて、鉄といえばどんな色を思い浮かべますか?黒?白?シルバー?グレイ?それらすべての色を、日本刀の中に見ることができます。
「モノトーンの美しさ」とは、日本刀の魅力を話してくれた久保さんの言葉です。国宝の『国行(来)』と『国行(当麻)』の前でそれを聞きながら、刃は白く透明な輝きを放つ一方で、地鉄の黒が怪しく光り、見事な刃と地鉄のコントラストで人を惑わす刀に、しだいに吸い込まれていくのを感じました。どんな金属も宝石も、日本刀の妖艶なこの煌めきにはかないません。それほどまでに人を惹きつける魅力が日本刀にはあるのです。実際に目にするまで、日本刀に対して「美しい」と感じるなんて思いもしませんでした。

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久保さんによると、日本刀を手にすると男性はザワザワと気持ちが騒ぎ、久保さんを含めほとんどの女性はやすらぎ、落ち着きを覚えるそうです。男性の反応は理解できますが、女性の感覚は不思議ですね。なぜそんな気持ちになるのでしょうか。守られていると思うのでしょうか。
日本美術刀剣保存協会に入会すると、月に一回鑑賞会があり、実際に日本刀を手に取ることができるそうです。かなりそそられる会員特典ですよね♪日本刀を持ったらどんな感情が自分の中に生まれるのか、試してみたくなります。ガラスケース越しにでも伝わる美しさを持つ日本刀を手に取って角度を変えながら鑑賞したら、きっと別の魅力も発見できそうです。

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ゴを持った龍の目貫(めぬき)。目貫は太刀・刀の身が柄(つか)から抜けないように穴にさし止める釘を覆う金具で、刀装の中心的パーツ

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富士と龍の細工がされた江戸時代末期の刀装具。当時の男性の美意識の高さがうかがえます

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刀剣博物館に取材に行った時、来場者は年配の男性ばかりでした。「歴女(れきじょ)」と呼ばれる歴史好きな女性が増えているためかどうかはわかりませんが、刀剣博物館によると、この5年で女性の来場者は確実に増えているそうです。それでも中高年の男性の方が圧倒的に多いのは変わりません。これほど美しいものを一部の男性だけの愉しみにしておくのはモッタイナイ。まだ知らないだけで、きっかけを得て一度見てみたらハマる女性が続出するはず。まずはあなたから周りに発信しませんか♪

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館所蔵品の中でも、トップクラスのものが今回の展示では並んでいるそうです。
初心者だからこそ、はじめに良いものを見て目を養いましょう♪都合がよければ、学芸員さんが解説をしてくれますよ。受付に一度、声をかけてみてください。
地鉄の黒の輝きが忘れられない私は、今後もたびたび刀剣博物館に足を運びそうです。

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【参考文献】日本刀は素敵(渡邉妙子 著/静岡新聞社 発行)

 

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インフォメーション

刀剣博物館は、古来より伝統技術をもって制作されてきた日本独自の文化財である刀剣、刀装具を展示している博物館です。平常は「古刀新刀名作展」などの通常展で平安時代から江戸時代にわたる著名な刀工の名品を展示していますが、企画展や特別展では「重要刀剣等新指定展」、「新作名刀展」等も行われます。

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●アクセス

東京都渋谷区代々木4-25-10
小田急線・参宮橋駅もしくは京王新線・初台駅より徒歩7分
TEL 03-3379-1386
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.touken.or.jp/museum/

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