緑豊かな温泉街に「日本きもの文化美術館」はあります
福島県郡山市にある磐梯熱海（ばんだいあたみ）温泉街に、日本きもの文化美術館はあります。温泉街と言っても、ちょうちんが連なっているようなところではなく、のんびりとお湯を愉しみに来るような、落ち着いた風情のある街です。
そんな静かな湯の町に立地している日本きもの文化美術館ですが、外の静けさとは対照的に、大正から昭和初期に流行した、パッと目を引く大胆な色使いで、大きな柄が特徴の「銘仙（めいせん）着物」を数多く展示しています。
玉糸（たまいと、節のある太い生糸）や絹のくず糸で織られた銘仙は、江戸時代以降、庶民の間では日常着に使用されていたほど丈夫な絹織物です。大正から昭和初期には糸や織り方に工夫がされて、技法の多様化とともに模様も華やかになりました。ヨーロッパに留学した上野の美術学校（現在の東京藝術大学）の学生にデザインを依頼するなど、モダンなデザインがどんどん銘仙に取り入れられたのです。今では珍しくもないことですが、藝大生にデザインしてもらうなんて、当時としてはかなり画期的なことだったでしょうね。
それまでの着物にはなかった華やかで遊び心のある柄に加えて、銘仙はリーズナブルで価格も魅力でした。現在の金額にすると、2万1千円～2万4千円ほど。庶民でも1シーズンに1着は購入できる価格設定によって、銘仙は大流行したのです。
大胆な色柄の銘仙着物「悠久の流れ（左）」と「夕陽に浮かぶ（右）」
館内には、「これは当時のものを復元したのですか？」と思わず尋ねてしまったほど、どれも新品のように状態が良く、色柄も鮮やかで見ているだけで楽しくなる個性的なデザインの銘仙着物が展示されています。
取材で伺った際に開催中だった企画展「昔きもの キャンパスは銘仙きもの 絵画風」（10月末で終了）では、着物をキャンパスに見立てたような柄の銘仙が並んでいます。
インドの王宮と木々の柄の「マハラジャ」、エジプトのピラミッド柄の「悠久の流れ」、オランダの風車の柄の「夕陽に浮かぶ」など、異国の風景がデザインされた銘仙着物ばかりが並んでいる様子は、まさしく美術展のようです。
「マハラジャ」や「悠久の流れ」など、着物にタイトルが付いてるの？と思われた人がいるかもしれません。芸術作品でもなんでもない普通の着物にタイトルがあるわけもなく、これは、ただ着物を掛けておくだけでなく、見る人にわかりやすくより楽しんでいただくためにと同美術館を運営する財団の理事である萩谷けい子さんが付けたもので、どの着物にもタイトルとコメントが記されています。
さて、この日本きもの文化美術館、所蔵している銘仙の豊富さもさることながら、ぜひ見ていただきたいのが花魁（おいらん）の衣装です。凝った刺繍、ふんだんに使用している金糸など、一般人はとうてい袖を通せない、尋常ではない豪華な衣装の数々。ドラマや映画で艶やかな衣装を身にまとって登場する花魁ですが、現実の世界で存在していたことを実感できる衣装や装飾品が展示されています。
特に鏡は、「過去、何人の女性がこの鏡を覗いてきたんだろう…」と考えると、ちょっとゾクゾクしますよ。
迫力のデザインの花魁の衣装。どんな花魁がこれを着こなしたのでしょう
見事な刺繍。こんなに美しい状態で残っていたのが不思議なくらいです
展示を見終わったら、併設の「カフェ蝶（てふ）」で清流を眺めながらお茶するのがおすすめ♪近くの受付にいる萩谷さんの手が空いている隙をねらって、ぜひ声を掛けてみてください。銘仙は、着物が好きな女性なら誰もが一度はハマる？！アンティーク着物の代表格。着物の話、銘仙の話、地元の話など、気さくにいろいろ教えてくれますよ♪
手作りの和雑貨や銘仙着物の販売もしています
併設のノスタルジア・ミュージアムは、着物に興味のない男性も楽しめる懐かしの品々を展示
美術館を後にして、磐梯熱海駅で電車の発車時刻にまだ余裕があれば、駅前にある足湯に立ち寄りましょう。美術館で美しいモノを見てうっとりし、足湯で身体が温ったら、さらに満たされて穏やかな笑顔がこぼれる和美人になると思いますよ♪
パッケージのデザインが美しい、懐かしいタバコの数々もありました
毎日来ている地元の人もいる磐梯熱海駅前の足湯。たとえ足だけでも、毎日温泉に浸かれば身体に良さそう♪
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インフォメーション
日本きもの文化美術館は、江戸時代以降の着物を展示する美術館です。所蔵品の中でも特に珍しいのが花魁道中着で、国内では同館のみのため、その観賞価値はとても高い。また、館内に併設しているノスタルジア・ミュージアムは、昭和30年代を中心に日用品、家具、おもちゃなども展示しています。
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●アクセス
福島県郡山市熱海町熱海5-211
JR磐越西線・磐梯熱海駅より徒歩10分
TEL 024-984-6011
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://nmkb.jp
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