摩耶山のふもとで心身を潤す、表情豊かな「布引の滝」

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山陽新幹線が乗り入れる新神戸駅。「神戸の背山」と呼ばれるがごとく、すぐ裏手には六甲山系の摩耶山が広がっています。摩耶山への登山口を進めば涼やかな水の音が聞こえ、やがてゴウゴウと音を立てる滝に出合えます。もっとも下流にあるのは「雌滝」。一帯にはさらに「夫婦滝」「鼓が滝」「雄滝」と4つの滝があり、総称して「布引の滝」といわれます。

 

新神戸駅と裏手に迫る山々

 

入り口はレンガ積みの布引水路橋(国指定重要文化財)

 

紀州の那智の滝、日光の華厳の滝と並ぶ三大神滝といわれ、古くは神聖な地と崇められていました。滝の神秘性にひかれて文人や貴族が多く訪れており、山道には紀貫之や在原行平などの多くの歌碑が残されています。
「松の音を琴に調ぶる山風は 滝の糸をやすげて弾くらむ」
――紀貫之
松風が吹く様を、滝の流れを糸にして琴を奏でているようだと詠まれた歌です。紀貫之はたびたび訪ねては滝の美しさを楽しんだそうです。

 

川沿いに進むと、すぐに滝の音が聞こえてきます

 

川道々にある歌碑。紀貫之の名が刻まれています

 

4つの滝には、それぞれの名前が表す特徴があり、表情の違いを楽しませてくれます。雌滝は高さ19メートル。しなやかに流れる上品な滝です。200メートル上流にある雄滝は、高さ43メートル。岩頭から水は5段に折れて、力強く落下しています。滝の両側は、急に山が高くなっているように見えます。これは、滝の上流側の山が大きく上昇したため。雄滝は、山の上昇による影響でできたとされています。5つの段にはそれぞれ水がえぐってできた甌穴(おうけつ)が開いています。その穴には乙姫様が住んでいたとされる竜宮伝説も伝えられています。人々は、滝壺前のベンチに腰かけて雄大な姿を眺め、思い思いに時を過ごします。細かな水しぶきが飛び、マイナスイオンを体いっぱいに浴びることができます。

 

細くしなやかに流れる雌滝

 

雄滝と、その下流を流れる夫婦滝

 

雄滝の滝壷でリフレッシュする人々

 

岩場に鼓の音を響かせるという鼓が滝

 

現在は、地元の人や観光客でにぎわう布引の滝。森林浴ができる軽いハイキングコースとして親しまれています。雄滝までは登山口から川沿いを進んで20分程度。道中は人の手の入らない自然そのままの暖帯林の植生が残されています。清々しい香気と澄んだ空気の中で、自然と呼吸も深くなり、ゆっくりと進んで行けば呼吸器や循環器系統のはたらきをよくするエアロビクス運動につながります。雄滝まで登れば、小さな茶屋でひと息つくこともできます。幾重にもかさなる緑の色合い、葉の形などを眺めていると、脳も活性化されているからでしょうか、詠めるものなら「ここで一句」という気分になります。さまざまな表情を見せる名瀑と、自然の調和。物語や詩歌によく引用されたその姿を感じに、何度でも訪れたい場所です。

 

深い緑に包まれて茶屋でひと息

 

雄滝の上にある展望台から見晴らす神戸の街

 

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アクセス

兵庫県神戸市中央区葺合町

神戸市営地下鉄、山陽新幹線「新神戸駅」から徒歩約10分
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