兵庫県・篠山市、篠山城の城下町に江戸時代の面影を残す古い街並、河原町妻入商家群があります。近年、古い民家をそのまま利用した雑貨屋やカフェなどがオープンし、京阪神から多くの人が訪れている新たな観光スポットです。この商家群を見おろす小さな丘陵、王地山。ここに「まけきらい稲荷」と呼ばれるお稲荷さんが祀られています。不思議な名前ですね。実は、この呼び名には古くからの言い伝えが由来しているのです。
石古い民家が大切に残されています
鳥居が連なって神秘的な光景
江戸時代後期、篠山藩主青山忠裕公は江戸幕府の老中という要職にありました。が、毎年、将軍様御上覧の大相撲大会で篠山藩の力士が負けてばかりで、その日が近づくにつれていつも憂鬱になっていました。
ある年のこと、「殿、今年は新顔の力士が10名、篠山より参りました」と家来が言うので出てみると、思った通り江戸の力士とは比べ物にならない力士ばかりで、殿様は内心あきらめていました。とはいえ、遠路はるばる出向いた10名、殿様は歓待し、酒肴でもてなしました。
そして大相撲大会当日、いざ大会が始まると篠山藩の力士の強いこと強いこと。全員が勝ち、将軍の前で優勝を果たし殿様は大喜びです。屋敷に戻るとすぐに「力士どもに褒美を遣わす。連れて参れ」「それが…姿が見えません」。殿様の命令で家来たちは東海道をひたすら走り追いかけましたが、どの宿場にもそれらしい姿はありません。力士を探して家来たちは、ついに篠山城まで来てしまいました。ところが、篠山城では力士をさしむけていないと言うではありませんか。
そこで調べてみると、10名のしこなは全て藩内の稲荷神社の名前でした。その中で、大関の名が王地山稲荷の王地山平左衛門でした。殿様は、「故郷の神々がお助けくださった」と、各神社に幟や絵馬を奉納して感謝しました。
以来、「まけきらい稲荷」と言われ、「合格成就」の神様としての信仰も厚く、パワースポットとして訪れる人がたえません。
階段の途中にある妙見堂
静かな境内にある拝殿
そんないわれを思い出しながら、連なる朱色の鳥居の下、階段をゆっくり上っていきます。階段の脇にある大きな古い木の根元に小さな祠、お稲荷さんのお使いである白い狐の像が見えます。最後の鳥居を越えると左手に「まけきらい平左衛門稲荷社」そして本殿をはじめとするお社がいくつもある境内に到着です。
この日は晴れたり曇ったり、小雨が降ったり、まさに天気は狐の嫁入り。折からの風に木々がざわめいて神秘的な空気が漂うなか、拝殿の前で手を合わせました。
稲荷神社は農業や産業の神様であり、芝居の神様でもあるそうです。「お稲荷さん」と親しみを込めて呼ばれる身近な存在であり、畏敬の念を感じさせる不思議なパワーがある神社です。
まけきらい平左衛門稲荷社
緑に囲まれた丘陵にあります
【写真協力】草田康博
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アクセス
王地山まけきらい稲荷
兵庫県篠山市河原町92
TEL 079-552-3380(篠山観光案内所)
http://tourism.sasayama.jp/2010/10/post-57.html
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