天女が舞い降りた地、三保の松原に行ってきました。古代から神の社である広大な松原は、日本最古の歌集「万葉集」にも和歌が残されている場所です。大正時代には全国で初めての名勝指定を受けた三保の松原は、今も約4キロの海岸線に5万本の松が茂っています。
国指定名勝 三保の松原
三保海岸から見える富士山
松林の緑と打ち寄せる白波、海の青さが織りなす景色はいつの時代も人々を魅了してきました。そして、天候に恵まれると駿河湾の向こう側に姿を見せる富士山や、伊豆の山々から昇る初日の出は格別な感動を残します。季節、時間、天気、海の色などによって新鮮な表情を見せつつも、どこか懐かしい心象風景ともつながるのが三保の松原の魅力なのです。
松林の向こうに見える水平線
「山の道」と「海の道」がある鎌ヶ崎遊歩道
自由な形に伸びた樹齢数百年の松は力強く、神秘的です。松林の中に立ち、古代の三保の地を想像してみると、天女が舞い降りたこともそれほど不思議ではない気がしてきます。奈良時代から語り継がれた「羽衣伝説」。天女が羽衣をかけたとされる有名な「羽衣の松」は、宝永4年(1707年)の富士宝永山噴火で海中に没してしまったと伝えられています。
石に願い事を書くと叶う羽車神社
羽車神社のとなりにある「二代目・羽衣の松」
その後、海辺の「羽車神社」のとなりに「二代目・羽衣の松」がありましたが、樹齢650年を迎えて傷みが激しくなったため、2013年7月に3メートルの幹を残して伐採され、現在は三代目の元気な松に世代交代をしました。樹齢200年の「三代目・羽衣の松」のバランスよく、そして優雅に幹を広げた姿がとても印象的でした。 羽衣の松は三保の松原から少し離れた「御穂神社」のご神体で、祭神の三穂津彦命・三穂津姫命が降臨する際のよりしろ(目印)とされています。
現在の「三代目・羽衣の松」
御穂神社と羽衣の松を結ぶ「神の道」
天女の羽衣の切れ端は、この「御穂神社」に保存されていると伝えられています。「御穂神社」と「羽衣の松」を結んで500mほど続く参道は、通称「神の道」と呼ばれていて、この樹齢200~300年の松並木では毎年2月14日の深夜に神事が行われます。神の道と呼ばれる道路ですが、普段は地域の人が犬の散歩をし、ベンチに座っておしゃべりをするような憩いの場所になっています。
「御穂神社」は、平安時代の書物にも記録が残っている古社です。本殿は静岡市有形文化財に指定されています。昔から「三保の明神さん」と人々に親しまれ、夫婦和合・縁結びなどのパワースポットとなっています。春には22種220本の桜が境内に咲き誇る名所でもあります。
御穂神社の正面
倒御穂神社拝殿
江戸時代の絵図に見られる三保半島は、すべてが松に覆われていました。2013年6月にユネスコ世界文化遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産に登録された三保の松原。その際、防波堤など審美的な観点から望ましくないと指摘され、物議を醸したことは記憶に新しいでしょう。三保の松原が直面している海岸浸食や松林の老化は深刻な問題で、現状では人の手を入れないとその景観を保つことができないそうです。
時代と共に歩んできた三保の松原を大切に残していこうと取り組む地元の方々の愛情や絆を強く感じました。そこにあったのは「自然の力」と「人の力」が共存する、平成の時代らしいパワースポットでした。
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アクセス
静岡市清水区三保
JR清水駅より三保車庫前行き約25分で「羽衣の松入口」下車、徒歩約10分
http://www.city.shizuoka.jp/deps/kanko/tabi_miho_guide1.html
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