三方を小高い山々に囲まれた静岡県周智郡の遠州森町は、かつて火伏せの神「秋葉神社」へ通ずる街道の宿場町として栄えました。街のあちらこちらに点在する「秋葉山常夜灯」という灯篭はその名残です。永い歴史の中で信仰と深く関わってきたこの地域は、神社や仏閣が多いパワースポットです。
伝統文化「田遊び神事」の中で使われるみょうじん様という言葉から名付けられた「明神通り」。このゆるやかな坂道を上った先に「遠江國一宮 小國神社」があります。1450年の歴史を持つ神社は、参道や境内に樹齢数百年の杉の樹が繁っているため、「古代の森」として知られています。小國神社の御祭神である大国主命(おおくにぬしのみこと)は、だいこくさまと呼ばれて人々に親しまれてきました。「因幡の白うさぎ」で知られる心優しい神様です。
明神通りの目印は太田茶屋の「赤い急須」
昭和44年に建立された明神型の「一の鳥居」
天に向かって反っている「一の鳥居」は力強さに満ちています。巨木に見下ろされながら「勅使参道」を進むと視界に飛び込んできたのは、真っ白な橋に静岡県の「森山焼」が色鮮やかに散りばめられた橋です。歴史ある参道にあえて投入された現代文化は、事待池(ことまちいけ)の入り口でひときわ目立っていました。。
願い事が成就すれば鯉を放す「事待池(ことまちいけ)」
小國神社の御祭神「大国主命(おおくにぬしのみこと)」
巨木に混じっている御神木や、道の脇にひっそりとある「駒止めの杉」など、参道の歴史ある見所のほとんどは通りすぎてしまうほどすっかり景色の一部となっていました。ただひとつ大きな存在感を放っていたのは、樹齢1000年と言い伝えられる御神木「大杉」の根っこです。昭和47年の台風で倒れてしまったそうですが、周囲約9mの迫力に誰もが足を止めます。新旧が共存した参道で、一つ一つの見所が時を重ねながら発し続けるエネルギー、その力強さに何よりも感動しました。
御神木「大杉」
再起を念じて石に腰かける徳川家康公の「立ちあがり石」
「二の鳥居」の脇に佇むのは、家康公の「立ちあがり石」です。15年間の浜松在城という辛苦の末、天下統一を果たした粘り強さにあやかりたいと、人生の再起を念じて石に腰をかけて帰る人も少なくないそうです。また境内で目を引いたのは大国主命ゆかりの「大宝槌(おおだからづち)」や「金銀石(きんぎんせき)」。金銀石を撫でてから隣の「願掛松(がんかけまつ)」を撫でると、金運や良縁に恵まれるそうですよ。
西参道側からの境内
天下泰平・諸行繁栄・良縁成就・交通安全・諸願成就「大宝槌」
参道と境内を堪能したら、ふらりと西参道に降りてみましょう。宮川のせせらぎを聞きながら、一の鳥居の方角へ戻るだけでも気持ちがいいものですが、反対方向の林道を進んで森の薫りを満喫するのもおすすめです。
たくさん歩いてお腹がすいたら、お茶の香りに誘われて「ことまち横丁」に向かいましょう。おかき、華うどん、かりん糖、みそ田楽、豚角煮入りのちまきなど…神社に来たことをすっかり忘れてしまう豊富な品揃えです。取材した日は昼間まだ暑くて「冷たい甘酒」が爽快でした。
「ことまち横丁」
お茶どころ遠州森町で季節限定の「月見茶」をいただきました
花より団子とは言いますが、温暖な気候の中で自然と共存してきた小國神社では、四季折々の花が拝観者を迎えてくれます。1月~2月の梅園、3月下旬の桜、春から初夏にかけてのしゃくなげ、130種40万本の色とりどりの花菖蒲が咲き乱れるのは6月です。11月下旬からは宮川の紅葉狩り、初詣にも30万人あまりの人が訪れます。こうして「おくにさん」は一年を通して老若男女問わず、人々の生活に根づいてきたのです。
もし時間に余裕があれば、天竜浜名湖鉄道遠州森町駅にあるレンタサイクルを利用してみてはいかがでしょう。神社や仏閣、森山焼の窯元などを散策しつつ、小國神社の荘厳さに触れながら、美味しいものを食べ歩くというちょっと欲張りな小旅行が楽しめそうですよ。
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アクセス
静岡県周智郡森町一宮3956-1
TEL 0538-89-7302
天竜浜名湖鉄道「遠江一宮駅」で下車し、送迎マイクロバス(日曜日及び指定日運行)で約10分
http://www.okunijinja.or.jp/
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