サッカーファンにはおなじみの「師岡熊野神社」

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横浜市にある師岡熊野神社(もろおかくまのじんじゃ)は、和歌山県に総本山があり、全国に3000以上ある熊野神社の、関東地方での熊野信仰の根拠地として崇敬されている神社です。さかのぼること約1300年前の神亀元年(724年)、全寿仙人によって開山された神社で、ご祭神は伊邪那美尊(イザナミノミコト)、事解之男命(コトサカノオノミコト)、速玉之男命(ハヤタマノオノミコト)です。

 

駅からアップダウンのある通りを来て、最後は石段の小高い場所にある「師岡熊野神社」

 

サッカーファンにはおなじみの三つ足鳥、八咫烏が御社紋

 

長い歴史をもつ師岡熊野神社ですが、あるスポーツに深い縁があることでも知られています。御社紋が、三つ足の八咫烏(やたがらす)であることに関係しています。サッカー好きの方ならすぐにピンと来るでしょう。日本サッカー協会のエンブレムと同じ、日本代表チームの胸にもある三つ足鳥です。師岡熊野神社は、2002年に日本と韓国で共催されたワールドカップのメーン会場になった日産スタジアム(横浜国際総合競技場)の守り神で、日本サッカー協会公認のエンブレムとマスコットを用いたサッカーお守りもあるくらい、サッカー神社としても有名です。チームの発展と、選手の健康を願うサッカー関係者やファンが大勢参拝に訪れています。
三つ足鳥は熊野大神の使いで、熊野を訪れたものの、山中で道に迷ってしまった神武天皇を救い導くためにやってきたといわれています。また、鳥は夜明けを呼び、太陽を招くといわれていることからも、暗闇で思い悩む人々に明るい道を示して導いてくれる神様の使いとして、信仰されています。サッカーに興味がなく、何も知らずに見ると、「三本足の不気味なカラス…」としか思えない三つ足鳥ですが、このように御社紋になるだけのいわれがあるのです。

 

師岡熊野神社を訪れたら、ぜひ本殿の裏へも行ってみてください。「神域につき立ち入り禁止」と記されている向こうにあるのは、“の”の池です。落雷で出火した際に、この池の水でご神体を守ることができたという尊い水で、現在も「筒粥(つつがゆ)」神事でこの池の水が使われています。
横浜市の指定無形民俗文化財でもある筒粥とは、粥占(かゆうら)・粥だめしの一種で、竹筒や芦の筒を入れて粥を煮て、筒の中に入った米粒の数で、その年の豊凶や天候を占うものです。農家ではその結果を参考にして種まきをしていました。師岡熊野神社では毎年1月14日に行われ、天暦3(949)年から継続されているといわれ1000回以上も続いてきた、稲作民族にとっては重要な行事です。

 

本殿裏にある“の”の池は、周囲の雰囲気が違います

 

平仮名の“い”に見えるという“い”の池

 

“の”の池のほかに、師岡熊野神社と通りを挟んだ向かいにも池があり、そちらは“い”の池といいます。昔々、熊野神社の権現さまがこの地域にいた悪者を退治した際に、弓矢で片目を射られて負傷してしまいました。そのときに、この池の鯉が権現さまに自分の目を差し出したという伝説が残っている池です。

 

「凶」が出ると特別に縁起直しのお守りがいただけるので、「凶」を目当てに引く人が多いという“おみくじ”

 

その昔は“い”の池、“の”の池、“ち”の池の3つがあり、3つ合わせて“いのち”の池といわれていました。“い”の池の西方500mほどのところにある“ち”の池は、残念ながら埋め立てられて現在は大曽根第二公園になっていますが、残り2つの池はいまだに水をたたえています。“いのち”の池と名付けられ、呼ばれているのは、先人たちの暮らしと水との関わりの深さをよく表しているといえるでしょう。
サッカーファンならずとも一度は訪れて、不自由なく存分にあると思ってしまっている水と、日々の暮らしについて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

 

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アクセス

神奈川県横浜市港北区師岡町1137
TEL 045-531-0150
東急東横線「大倉山駅」より徒歩8分

http://www.kumanojinja.or.jp/
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