天下統一を果たし、260年間にわたる江戸時代の礎を築いたのは徳川家康。では、その家康の“ふるさと”と言えばどこでしょう。東京や静岡県(浜松市)を思い浮かべた人が多いかもしれませんね。正解は、愛知県三河地方の岡崎市。家康の生まれた場所が、今回紹介する岡崎城なのです。
岡崎城(岡崎公園)への入口、大手門
家康の象が座る「出世ベンチ」。並んで座ると出世するとか。隣には家康の子ども時代・竹千代バージョンも
徳川家康は、天文11年(1542)に岡崎城内で生まれました。しかし、わずか6歳で織田信秀(信長の父)、8歳で今川義元の人質となり、少年期を他国で過ごします。永禄3年(1560)の桶狭間の戦いで義元が戦死したのを機に岡崎城に戻りますが、元亀元年(1570)、本拠を遠江浜松(静岡県浜松市)に移転。天正18年(1590)には、対立していた豊臣秀吉によって関東に移されます。秀吉の死後に天下を取り、江戸幕府を開いたのはご存知の通り。その後、家康が城主として岡崎城に戻ることはありませんでしたが、譜代大名にここを守らせ、重要な拠点の1つとしました。家康の死後は「神君出生の城」として神聖視され、本多氏(康重系統・忠勝系統)、松平氏ら家格の高い譜代大名が城主となっています。
天守閣の足下にある「東照公遺訓碑」。「人の一生は重荷を負いて遠き道を行くがごとし」から始まり、胸に響く言葉が続く
美しい天守閣。家康の、そして三河の歴史を今に伝える
現在の岡崎城は、昭和34年(1959)に、ほぼ昔通りの外観の天守閣を復元したものです。3層5階建てで、2階から4階までが江戸時代の岡崎を紹介する歴史資料館になっています。5階の展望室からは三河平野を一望することができます。天守閣自体はこじんまりとした造りですが、周囲には水堀や石垣、井戸跡などが残っており、岡崎公園として整備されているのでぜひ散策してみてください。何でもない場所に「東照公(家康)産湯の井戸」があったりして、意外な発見がありますよ。
また、この公園は、見事な桜でも知られています。時期になると天守閣を中心に約2000本の桜が咲き誇り、とくに夜桜は東海随一とも。「日本のさくら名所100選」や「日本の都市公園100選」に選ばれたほどで、桜を目当てに訪れるのもいいでしょう。
明治時代に取り壊される前、旧天守の心柱の礎石。心柱は3階まであったと考えられている
正面から見た龍城神社。社殿再建の際には、天神地祇(天地の神々)や護国英雄も合祀した
さて、岡崎城を訪れる際に必ず足を運んでいただきたい場所があります。それは、天守閣すぐ東隣に鎮座する龍城(たつき)神社。この神社の起源は、15世紀前半にさかのぼります。社記によれば、守護代・西郷頼嗣(稠頼)が築城したときに龍神が現れ「汝われを鎮守の神と崇め祀らば永く此の城を守護し繁栄不易たらしめん」と告げたかと思うと、城中の井戸の水が噴き出たとか。これに驚いた頼嗣が天守楼上に龍神を祭り、城の名を「龍ヶ城(岡崎城の別名)」、井戸の名を「龍の井」と称したのがはじまりです。龍神は家康が生まれたときにも現れたと伝えられており、のちにその偉業をたたえて家康を奉祀。そして、家康の忠臣で岡崎城主でもあった本多忠勝を合祀して今に至っています。このことからも分かるように、同神社のご利益は、何と言っても出世開運・諸願成就。もちろん、ほかにも商売繁盛、良縁、子授、家内安全、長寿などあります。ここで、あなたの願いを祈ってみましょう。ちなみに、現在の社殿は昭和37年(1962)に再建されたもので、拝殿の天井には国内最大規模と言われる白木彫りの昇龍が奉納されています。
岡崎城西側を流れる伊賀川沿いの小道。春になると、桜並木が周囲を薄桃色に染める
伊賀川沿いにある「東照公産湯の井戸」。家康が誕生したおり、この井戸の水を産湯にしたという
出世開運のパワーは、神社にだけあるのではありません。実は、数々の苦難を乗り越えて天下を統一した家康が生まれた城ということで、岡崎城そのもの及び周辺に開運パワーがあふれていると言われているのです。このパワーの源が、天守閣1階にある心柱(しんばしら)の礎石だとする人もいますが、ここでは確かなことは言えません。しかし、この地に何かしらのパワーを感じる人が少なからずいるのは間違いないでしょう。そして一方で、パワー云々ではなく、後半に開花した家康の人生に惹かれて訪れる人もたくさんいます。「『神君出生の城』として神聖視され」たのは昔の話、ではないようです。
岡崎は、八丁味噌でも有名。公園内には味噌おでんや田楽を出すお店がいくつかあるので、ぜひ
「三河武士のやかた家康館」。関ヶ原の戦いを再現した可動式ジオラマも面白い
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アクセス
愛知県岡崎市康生町561
TEL 0564-22-2122
名鉄東岡崎駅から徒歩15分
http://okazakipark.com/museum/ka171.htm
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