兵庫県朝来市。但馬の山々が連なる大パノラマの中に、「日本のマチュピチュ」と呼ばれる城跡があります。標高353メートルの古城山。嘉吉3年、但馬の守護大名、山名宗全が13年を費やして山頂に築いた竹田城。天正5年、8年の二度にわたる秀吉の但馬攻めで落城し、秀吉の命で近代城郭に造りかえられたのが、現存の遺構だと言われています。
天守台を最高峰に、本丸、平殿、奥殿、花殿が見てとれ、南千畳と北千畳が南北400メートル、東西100メートルに広がっています。この縄張りは全国屈指の豪壮さだと言われています。
石垣は自然石を加工せずにそのままの形で積み上げた穴太流。「石の声を聞きながら積み上げた」と伝えられる構法で、適度な隙間があるため水はけがよく、堅固な石垣です。安土城、姫路城も同じ穴太流が用いられています。
迫力ある穴太積みの石垣
南二の丸から南千畳を見晴らす
城跡へは、JR竹田駅の裏手から急斜面を登山するか、山の中腹の駐車場までバスか車で行き、緩やかに登るハイキングコースがあります。今回訪れたのは蒸し暑さがピークだった8月。中腹まで車で行き、山頂まで20分程度ゆっくり歩くと、心地よい汗をかきました。城跡は一帯に緑が茂り、山、川、田の見晴らしが、立つ場所、天候、時間によってさまざまな表情を見せてくれます。観光客の姿も多く、皆一様にカメラを構え、絶景ポイントを探しています。竹田城が観光スポットとして有名になったのは「日本のマチュピチュ」と言われるようになった近年のこと。2012年夏に公開された映画「あなたへ」(主演:高倉健、田中裕子)のロケ地にもなり、知名度が上がり続けています。
中腹の駐車場にある山門
城跡でカメラを構える人
桜、新緑、紅葉、雪景色――。四季の美と相まって威風を放つ竹田城。とりわけ神秘的なのが秋の雲海です。9月から10月にもっとも多く見られ、「よく晴れた日の翌朝、日の出から8時ごろまで、風が弱いこと」という条件を満たせば、一帯を流れる清流、円山川から霧が立ち上ります。霧はちょうど城跡の石垣の下方までかかり、まるで雲海に浮かぶ天空の城のような姿を見せます。
その景色を見ることができるのは、城跡の北西にある藤和峠、南東にある立雲峡。それぞれ撮影ポイントがよく知られており、近くまで行けば案内が出ています。藤和峠の撮影ポイントへは車で行くことができますが、雲海の時期になるとカメラを携えた人でいっぱいになるそうです。8月は雲海には出合えませんでしたが、朝霧が晴れる瞬間、夕焼け時などにも荘厳さを増します。
日暮れがかった城跡
城跡から見晴らす町
自然と調和し、往時の偉容を思わせる竹田城。なぜこのような山上に石を運び、長い年月をかけて城を造ったのか。詳しいことは知る由がありません。ただ、昔の人々も雲海が分かつ山頂を見て、その雲の上の世界に神聖さを感じたのではないでしょうか。雨降る朝、藤和峠からうっすらと見えた城郭。目をこらせば、濃い霧の中に当時の武将たちの姿が見えるような気がしました。
雨上がり、藤和峠から城跡に向かって
兵庫県朝来市和田山町竹田
TEL 079-672-6141(朝来市役所産業経済部竹田城課)
JR播但線「竹田駅」より登山道で徒歩約30分、車で中腹駐車場まで約10分