魅了する美しさ「金閣寺(鹿苑寺)」

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金閣寺は鎌倉時代の公卿、西園寺公経(きんつね)が建てた別荘を応永4年(1397年)に室町幕府三代将軍の足利義満が譲り受けた後、壮大な北山殿をこの地に造ったことに始まるとされています。正式名称は鹿苑寺(ろくおんじ)で、義満の法号鹿苑院殿にちなんで名づけられました。一般には俗称の金閣寺の呼称になじみがあるかもしれませんね。しかしその名が広く用いられ出したのは意外と遅く、江戸時代に入ってから。文献に金閣寺との呼称が使われ、京都へ訪れる観光客が増えていくのに合わせて次第に俗称が定着していきました。現在では舎利殿を含めた境内全域を示す呼び名として広く用いられています。

 

金閣寺総門

 

金閣(舎利殿)と鏡湖池

 

その金閣寺を代表する建物といえば鏡湖池(きょうこいけ)のほとりに佇む金閣(舎利殿)でしょうか。三層構造の楼閣建築で、各層にはそれぞれ部屋の名前が冠されています。
一層目は寝殿造の法水院(ほっすいいん)、二層目は武家造の潮音洞(ちょうおんどう)
三層目は、禅宗仏殿造の究竟頂(くっきょうちょう)、各層とも義満の思想が深く反映された造りになっています。またその外観は二層目三層目に漆の上から金箔が貼られ、文字通り優雅に輝く黄金色が視界を釘付けにしてくれます。

 

実際この金閣の美しさは人の心を怪しく魅惑する作用があるようですね。
昭和25年(1950年)、7月2日未明のこと。寺の学僧であった林承賢(はやししょうけん)が金閣寺に火を放ちました。瞬く間に燃え広がった炎熱は金閣を全焼、加えて国宝の足利義満坐像、観世音菩薩像、夢窓疎石像等10体の木像等も焼失してしまいました。のちに捕まり動機を聞かれた林承賢は頭を垂れたままこう答えたそうです。
「美に対する嫉妬」
この一言に関心を持った三島由紀夫が後に「金閣寺」を執筆したのはとても有名な話ですね。

 

方丈(本堂)。単層入母屋造で桟瓦葺

 

陸舟の松

 

創設者である義満はいったいどのような人物だったのでしょうか。
一般的には戦乱、政争に明け暮れ、最終的には世の中の冨や権力をその手に収めたイメージが強いですが、芸術の分野でも稀有な才能を持ちあわせた稀代の芸術家として周囲から尊敬されていたようです。事実義満7歳の時には瀬戸内の風景を見て「この地をかついで京都にもっていけ」と命じ、周囲を驚かした逸話もあるくらい。義満の風景に対する強烈なまでの感受性を知れば金閣寺の庭園に最高級のアートを見て取れるのも不思議な事ではありません。

 

鹿苑寺境内4万余坪の内、およそ2万8千坪の庭園が特別史跡及び特別名勝指定地となっています(昭和31年指定)。中でも素晴らしいのが金閣の前に広がる鏡湖池。その湖面には名前の付された多くの島や石が浮かび、周囲を巡りながら眺めると角度の違いで変化に富んだ景観を楽しむことができます。更には垂直方向からの眺めにも工夫が凝らされ金閣の内部を一層、二層、三層と高さを変えて見るたびごとに浮かぶ石や島の意味合いが理解される仕組みになっています。例えば一層からの眺めでは葦原島(蓬莱島)の木々が四季の移ろいで素晴らしく、上層へ上がれば葦原島が単なる大きな島ではなく、実は当時考えられていた日本列島そのものを表現していたことに気づかされます。そして目を凝らせば淡路島や富士山の模した石もあり、それら細かな配慮も含めた義満の作庭技術を前に改めて驚嘆の想いに駆られるのは私だけではないでしょう。

 

金閣寺垣。両脇の背の低い竹垣は小竹垣の代表とされています

 

洗竜門の滝と鯉魚石

 

鏡湖池を道沿いに歩いていると、方丈の裏手に陸舟(りくしゅう)の松と呼ばれる大きな松の木が見えてきます。「善峰寺の游竜の松」「大原宝泉院の五葉の松」と並び京都三松の一つに数えられるほど金閣寺では名物となっていますが、実はこの松の木、義満が丹念に育てた盆栽が成長し大きくなったものであると言われています。よってその樹齢はおよそ600年。舟の形をし、方向が金閣に向いているのはこの舟に乗りこんで西方浄土へ赴くという意味合いがあるようです。

 

池を背に奥に進めば程なく竜門の滝が見えてきます。約3メートルもの高さを一段落としにした滝で、龍門の滝を鯉が登りきれば、龍に化けると言われる中国の故事、登竜門に因んで作られました。なおその鯉を模した石は鯉魚石(りぎょせき)と呼ばれ、滝壺で斜めに傾き置かれています。その姿はまさに今跳ね上がろうとする鯉の力強い様子を表現しています。

 

夕佳亭(せっかてい)。3帖の茶室でその名の由来は、夕日に映える金閣が殊(こと)に佳(よ)いからきています

 

不動堂。その本尊は弘法大師が作ったと伝えられる石不動明王

 

このように金閣寺を見て回っていると義満の芸術に対する強い想いを至る所で発見することが出来ます。当初、義満に抱いていたイメージはおそらく金閣寺を出る頃には全く違うものに変化していることでしょう。

 

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アクセス

京都府京都市北区金閣寺町1
TEL 075-461-0013
京福電気鉄道北野白梅町駅下車徒歩約20分
または京都駅から市バス101、205系統で金閣寺道下車すぐ

http://www.shokoku-ji.jp/k_about.html
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