縁結びのお守りに恋の成就を願う「生田神社」

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車の往来激しく、ビルや商店の隙間を縫うように絶えぬ人群れの交錯しゆく神戸の地、
そのもっともにぎやかである所の三宮駅前ターミナルから北へ数分歩くと、繁華街の喧噪の最中にあって一種独特な気配を醸す巨大な鳥居が突如として現れます。その先には朱塗りの艶やかな楼門が聳え、周囲は豊かに木々が育ち、街のざわめきを遮断するような静かな小鳥のさえずりを聴けば、まるでこの地が唯一特別な空間軸で存在している気すらしてきます。

 

実際神戸の地名は「かんべ」、つまり「神様をおまつりしていた人々の住んでいた土地」が由来となっており、それを物語るように江戸時代までこの辺りは人影の少なく、静かで、自然豊かな生命力あふれる土地であったようです。そう考えれば1800年以上の歴史を有する生田神社に今なお「かんべ」の余韻が残っていてもおかしくはありません。

 

生田神社の祭神は天照大神の妹神とも和魂(にぎみたま)とも称される稚日女尊(わかひるめのみこと)。その名の示すところは「稚くみずみずしい日の女神」の意であり、信仰する者に対し、物を生み育て万物の成長を促進させるご利益を与えてくれます。元々生田神社は活田神社と呼ばれていました。その理由は生田神社創建のエピソードの記された日本書紀に詳しく、つまり201年に神功皇后が三韓外征から帰る道すがら、現在の神戸港で船が進まなくなったゆえに神占を行った所、稚日女尊が現れ「吾は活田長峡国に居らむ(居たい)と海上五十狭茅(うなかみのいそさち)に命じて生田の地に祭らしめ」と語った言葉に端を発しています。「活田」とは読んで字の如くいきいきと生命力あふれる場所の意味。それを裏付けるように生田神社にはご利益を授けてくれる特別なパワーが境内に満ちているのです。

 

その一つに恋愛成就のパワーが挙げられるでしょう。その象徴となる縁結びのペア守は男女二人そろって参詣し、縁結びを願いながら男性は白、女性は赤のお守りを受け取ると願いが通じるとのこと。そのご利益にあやかろうと関西のみならず遠方からも多くのカップルがこの地を訪れるといいます。加えて、その後、二の鳥居の脇に建つ松尾神社へ赴き、そこに聳える一番手前の杉の木へ縁結びを一心に願えば尚の事パートナーとの恋愛がうまく進展するのだそうです。愛と記されたハート型の絵馬に願いを託してみるのもよいでしょう。また恋愛以外にも生田神社には稚日女尊の万物の成長を促進させる働きを宿したともいえるお守りが多数用意されています。例えば夫婦で持ち歩くことでご利益のある子授け守や、身を守るお守りである肌守、そして学業成就や開運に関わるお守りまでその数は実に豊富です。参詣の折にはぜひご覧になってみてくださいね。

 

楼門

 

松尾神社。祭神は大山咋命で酒造農工業の神様

 

ところでこのかんべの地、中世にあってはしばしば合戦の舞台となりました。特に境内北側に広がる生田の森は鎌倉、室町の動乱期には繁茂した植生が、旧生田川(現在のフラワーロード)にまで広がり、この密生した大森林帯を武士が軍事的な要衛地としておおいに利用していました。とりわけ寿永3年(1184)の源平の合戦は名高く、梶原源太影季(かじはらげんたかげすえ)率いる源氏方と平和盛率いる平氏方のぶつかりあいでこの地は激しい戦火に見舞われました。その時、梶原源太影季が咲き誇る梅の一枝を手折り、箙(えびら)に挿してまさに破竹の勢いで敵をなぎ倒したエピソードは、後世に語り継がれ現在、能や歌舞伎で「箙の梅」と題し演じられていますね。

 

拝殿

 

生田の森。森の中には祭神を神功皇后とする生田森坐社が建っています

 

ちなみにこの生田の森、昭和20年6月5日の神戸大空襲によって壊滅的な被害を受けてしまいます。天を突くほどまでに群生していた巨大なクスノキのほとんどが社殿とともに無惨にも犠牲になってしまったのです。往事の姿がしのばれますが、とはいえそうした幾多の災厄にあっても力強く生き残ったクスノキに注目することが重要です。現在7株程残っているようですが、樹齢は新しいもので400年、古いもので800年を誇り、当初境内に足を踏み入れた時に感じた一種独特な気配は、そのクスノキより発する生命力が境内を流れ、満たし、その内と外をはっきりと分けているからなのかもしれません。

 

「しぐれ行く 生田のもりの こがらしに 池のみ草も 色かはる頃」
                             藤原定家

 

生田の森でもそうであったように、生田の池にも名だたる歌人が訪れその景観を歌にしました。事実陽光を受けて輝く湖面、その上をカモやオシドリが泳ぎ、季節を代表するカラフルな花々が周囲を彩る様は心が和みます。折よく池の畔には恋愛成就にご利益のある弁天社が建ち、脇には絵馬をかける場所も設置されています。どうせなら縁結びのお守りを受けとり、松尾神社に礼拝した後はハートの絵馬を携え弁天社に立ち寄って祈念してみてはいかがでしょう。

 

弁天社。別名を市杵島神社(いちきしまじんじゃ)と称し、祭神として市杵島姫命を祀っています

 

大海神社。猿田彦命(さるたひこのみこと)を祭神とし、参ると交通安全のご利益があります

 

蛭子神社。祭神として蛭子命(ひるこのみこと)を祀り、商売繁盛のご利益あり

 

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アクセス

兵庫県神戸市中央区下山手通1-2-1
TEL 078-321-3851
JR三ノ宮駅、私鉄各線三宮駅より北へ徒歩10分
詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.ikutajinja.or.jp/
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