円空仏も堪能できる 前田利家ゆかりの寺〜名古屋市・荒子観音寺

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名古屋市中川区にある荒子観音寺(浄海山円龍院観音寺)は天台宗のお寺で、尾張四観音の一つとして知られています。尾張四観音とは甚目寺観音(あま市)、竜泉寺観音(名古屋市守山区)、笠寺観音(名古屋市南区)、そして荒子観音の四寺のことで、徳川家康が名古屋城築城の際、城から見て鬼門の方角にある四寺を鎮護として定めたとされています。

 

開祖は、北陸の名峰白山を開いた泰澄(たいちょう)和尚。奈良時代の天平元年(729)に創建、本尊の聖観音像は泰澄自身の作と伝えられています。その後、戦乱に巻き込まれるなどして興廃を繰り返しますが、天正4年(1576)に前田利家が本堂を再建しました。

 

利家は、荒子城主・前田利昌の四男として生まれ、織田信長に仕えたのち豊臣秀吉につき、加賀の国を与えられた戦国武将です。荒子城内の天満宮をあがめていたことから、その別当を務めた観音寺にも深く帰依。観音寺は、前田家の菩提寺でもありました。近くには利家の生誕地とされる荒子城跡(冨士権現天満宮)もあるので、時間があればそちらまで足を伸ばしてみてください(生誕地は、やはり近くにある前田速念寺との説もあり)。

 

江戸時代になると尾張徳川家の庇護を受けながら繁栄するものの、明暦年間(1655〜58)や文化年間(1804〜18)に焼失。明治・昭和時代には地震で2度にわたり倒壊し、さらには平成6年(1994)に本堂を焼失するなど、何度も危機を乗り越え再建されてきました。その一方で、境内には約470年前に建てられた多宝塔(国指定重要文化財)なども残っており、古さと新しさが同居する穏やかな空間となっています。

 

本堂。平成6年(1994)に焼失し、3年後の平成9年(1997)に再建された

 

本堂には本尊の聖観音像が祀られているが、33年に1度の開帳で普段は見られない

 

本堂の向かって右手には、真言宗の開祖である空海も祀られている

 

室町時代の多宝塔(二重塔)。名古屋市内に現存する最古の建築物

 

荒子観音の名が広く知れ渡っているのは、前田家ゆかりの寺ということだけではありません。当寺には円空が彫った“円空仏”がたくさん残されており、多くの研究者や仏像ファンなどに注目されているのです。

 

円空は江戸時代の修験・遊行僧で、生涯に12万体の仏像を彫ったと言われています。現在までに、北は北海道から南は奈良県まで約5000体が発見されており、うち約3000体が愛知県、約1000体が岐阜県にあります。全国をめぐり歩いた円空ですが、美濃国(現在の岐阜県羽島市上中町)出身ということもあるのでしょう、この地方周辺に集中しているようです。

 

本堂・賽銭箱横の「賓頭盧(びんずる)」。この像の頭や手足など撫でた手で、自分の同じ患っている部分をさすると治るという

 

本坊入口。円空仏を模した大きな十一面観音菩薩が置かれている

 

円空は観音寺十世円盛と親しく、延宝・貞享のころ(1680年前後)に当寺をたびたび訪れており、現在、仁王門の中に納められている3メートルを超える2体の仁王像を初め、小は2〜3センチの木端(こっぱ)仏まで1240体あまりの円空仏が残されています。当時、観音寺の敷地内には蓮池という池があり、そこに檜(ひのき)の大木を浮かべて仁王像を彫り、余った木片を使って大小の木像を彫ったのだとか。

 

主要部を1本の木から彫り出す「一木造り」、また、簡素にノミで荒く彫るだけという彫法が円空仏の大きな特徴です。力強さと素朴さが胸を打つ、芸術作品とも言えるでしょう。これらは、毎月第2土曜日の午後1時〜4時まで、本坊で拝観できます。寺行事のためにお休みする月もあるので、拝観希望の方は事前に確認してください。

 

最後に。尾張四観音では、毎年正月18日の初観音の日(現在は節分の日)に節分祭が行われます。とくに、その年に名古屋城を中心として恵方に当たる寺では盛大に行われ、多くの参拝者が集まります。「恵方の観音様」を参拝すると、御利益が多いと伝えられているのです。平成27年は、荒子観音寺が恵方に当たります。おもな御利益は厄除け・開運と縁結び。ぜひぜひ、参拝に行きましょう。

 

六角堂。傅大士(ふだいし)が祀られており、普建童子と普成童子が左右にある

 

小さなお地蔵さまと4体の鬼に守られた地蔵尊

 

鐘楼。除夜の鐘をつくため、毎年多くの人が並ぶ

 

仁王門。この中に、円空による仁王像が2体納められている

 

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アクセス

名古屋市中川区荒子町宮窓138
TEL 052-361-1778
地下鉄東山線「高畑」駅より徒歩約10分
名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線)「荒子」駅より徒歩約10分
※参考サイト:名古屋観光情報 名古屋コンシェルジュ
http://www.nagoya-info.jp/shisetsu/ftwDFHIT.html?cts=view
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