日本の小釈迦を生んだお寺「法楽寺」

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法楽寺の創始は、源平の合戦で戦死した平家と源氏の霊を弔うべく治承2年(1178)に平重盛が仏照より賜った紫金の仏舎利二顆と源義朝の念持仏如意輪観世音を安置したことに始まります。しばらくは兵火に見舞われることなく、安泰に教えを敷衍していましたが、元亀2年(1571)の織田信長の侵攻により境内は甚大な被害を受けることになります。堂宇の悉くは灰塵と帰し、その頃までに所蔵されていた古文書も焼けてなくなってしまいました。

 

ひとまずの復興をみたのがそれから14年後の天正13年(1585)、そして江戸時代の正徳元年(1711)には洪善普摂(こうぜんふしょう)律師の手により、大和宇陀の城主織田家の殿舎が移建され本格的な復興が開始されました。現在は戒律の伝統が潰えたことにより律院としての法楽寺ではなくなりましたが、それでも祈祷寺・檀家寺として俗に「田辺のお不動さん」との名で呼ばれるほど、地元の人から愛されているお寺となっています。

 

正門

 

法楽寺を紹介する上で、正法律(しょうぼうりつ)の開祖とも言われている(諸説あり)慈雲尊者飲光(じうんそんじゃ おんこう)の人生に触れないわけにはいきません。
若干13歳の折に法楽寺で出家した慈雲は中興第二世である忍綱貞紀(にんこうていき)の元で密教と梵語(サンスクリット)を学びます。18歳になると、忍綱の命で伊藤東涯へ赴き古学派の儒学を学ぶと、翌年には奈良の地で顕教、密教、神道を修めたのに加えて、野中寺(現・羽曳野)では戒律の研究を開始、そこで1738年に具足戒を受けました。その後、数年ぶりに帰寺した法楽寺で住職の座におさまりはしたものの、わずか2年足らずでその座を同門に譲り、次に赴いた信濃では曹洞宗の僧侶・大梅禅師のもとで一心に禅の修行に励んだと言われています。

 

慈雲の最大の思想は延享元年(1744)、長栄寺の住職の折に説いた「正法律」という教えに結実しています。正法律とは釈尊が定めた通りの生活・修行を常に行い、禁じられたことは行ってはいけないが、釈尊の説いた戒と律を順守し実行してさえいれば、どの宗派を兼学しようと許容されるという思想のこと。一宗一派にこだわらないところが慈雲らしくもあり、この仏教への原点回帰を志す点、後に、剣術家、政治家として活躍した山岡鉄舟より「日本の小釈迦」と強く絶賛された所以でもあるのでしょう。

 

本堂。不動明王・釈迦如来・如意輪観世音菩薩・歓喜天を祀っています

 

リーヴスギャラリー。平成9年に開館。故小坂奇石の作品400点所蔵分を毎年11月から12月にかけて展示

 

条件つきで諸学兼宗を認めていた慈雲の教えを象徴するが如く、法楽寺境内にはくすのき文庫と呼ばれる小さな建物があります。中には主に子供の勉学意欲を刺激する様々な分野の図書が揃い、誰でも借りることができることから開館日である毎週土曜の午後3時から5時までは多くの子どもが本を片手に読書にふけっている姿が散見されます。
お寺にこういった施設があるのも珍しいですが、その意は慈雲の哲学を現世にも引き継ごうとする寺の想いの現われなのかもしれませんね。

 

くすのき文庫

 

くすのき文庫の向かいには樹齢800年の楠が大きな天に向かって突き立っています。樹高26メートル、幹の外周8メートル、枝葉の外周26メートルは大阪府下において住吉大社の楠に次いで2番目の威風を誇り、昭和56年、大阪府指定天然記念物の指定を受けています。樹齢800年ということですから、おそらく300年前、慈雲がこの寺の住職であった頃にもその威容は健在であったのでしょう。遠くからもその広げた太い枝葉が見えたのが印象的でした。

 

楠。三重塔同様、遠くからでもその雄姿を眺めることが出来ます。昔は8キロ先からでも眺めることができたそうです

 

なお同じく法楽寺のシンボルタワーとも呼べる三重塔も必見の堂宇。通称「平成の三重宝塔」ともいい、その礎石上塔総高はおよそ23メートルを誇っているので、ご参拝の折には是非シャッターにおさめてくださいね。

 

三重塔。少し離れたJR阪和線の車内からも見える巨大な塔。内部には紫金二顆の仏舎利が安置されています

 

四国八十八カ所霊場本尊

 

田辺大根の碑。歴史ある田辺大根ゆかりの地である法楽寺では、年末28日に催されるしまい不動において田辺大根の大根炊きが振る舞われます

 

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アクセス

大阪市東住吉区山坂1−18−30
TEL 06-6621-2103
JR阪和線南田辺駅下車徒歩4分
地下鉄谷町線田辺駅下車徒歩10分
詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.horakuji.hello-net.info/index.htm
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