職人の街・燕の産業のすべてが分かる「燕市産業史料館」

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img class=”alignnone size-medium wp-image-75″ src=”http://bihadasabo.net/hp/images/town/spot/tenji_125a.jpg” alt=”” width=”300″ height=”200″ />外観からもその広さがわかる「燕市産業史料館」。時間に余裕を持って訪れたい

 

経済産業大臣の指定を受けた伝統的工芸品の数が、全国1位の京都の17品目に次いで、16品目ある新潟県。その中でも全国的に有名なのは『燕鎚起銅器(つばめついきどうき)』でしょう。銅の伸縮性を利用して、1枚の銅板を鎚(つち)で打って伸ばしながら、継ぎ目のないやかんや花瓶などの製品をつくり出しています。鎚起銅器のほか世界有数の金属洋食器の産地でもある燕の、歴史から産業の全体像まで知ることができる「燕市産業史料館」を訪ねました。

 

燕の金属産業のはじまりは、江戸時代にまでさかのぼります。寛永年間(1624~44年)、当時この地を治めていた代官が、江戸から和釘職人を連れてきました。信濃川が氾濫するたびに困窮する農民の暮らしの安定を図るため、農民の冬季の仕事となるように技術を覚えさせたのです。それがしだいに盛んになり、釘鍛冶を本業とする農民が増えていきました。

 

【本館】2階では、江戸時代の主な産業だった和釘や鑢(ヤスリ)、煙管(キセル)のほか、鎚起銅器の用具、作業場が復元展示されています。鎚起銅器の製造も、江戸時代からはじまりました。燕の近くの間瀬(現在の弥彦山山麓)から良質の銅が採れたので、それを利用して日用品はすでにつくられていました。そうした下地があった燕に、江戸後期、仙台方面から鎚起の技法が伝えられたことで、鎚起銅器の製造がはじまりました。銅を「鎚」で打ち「起」こすことから「鎚起」といわれています。
鎚起銅器ならではの用具に、打ち起こした銅板を引っかけて打ち絞っていく「鳥口(とりくち)」があります。数100種あるそうですが、こちらでは約10点を展示しています。並んでいても素人には違いの分からない形もあり、繊細なものづくりをしている職人の用具であることが分かります。

 

【本館】鎚起銅器の作業場

 

鎚起銅器ならではの用具「鳥口」

 

歴史を感じさせる2階の展示に対し、1階では少しユニークな展示物があります。「オール“18-8ステンレス製”鯉」です。本体はすべて耐蝕性や耐熱性に優れた“18-8ステンレス”で出来ていて、鯛のうろこ部分には、なんとスプーンが差し込まれています。燕の産業の繁栄を願うシンボルとして展示されています。

 

うろこにスプーンが差し込まれている「オール“18-8ステンレス製”鯉」

 

用途別に細かく分けられているカトラリーが並ぶと圧巻

 

【別館】の「丸山清次郎コレクション 矢立煙管館」には、燕出身の故丸山清次郎氏が収集した煙管・煙草入れ、矢立が展示されています。煙管も矢立も江戸時代から燕で製造され、明和年間(1764-1771)から煙管の技術は引き継がれており、燕市の無形文化財の指定を受けています。コレクションは逸品揃いで、徳川綱吉や犬養毅といった歴史上の著名人が使用した煙管や、名工が彫金を施した煙管が並んでいます。一方、携帯用筆記用具入れだった矢立は、寛政6(1795)年頃から明治末期まで製造されていましたが、残念ながら技術は途絶えてしまいました。そのため、歴史的資料としての価値が高くなっています。

 

【別館】の矢立煙管館には、幕末から明治の侠客・清水次郎長など著名人の逸品が並ぶ

 

【新館】では、金属洋食器の歴史が紹介されています。明治44(1911)年、銅器の産地としてすでに名を馳せていた燕に、東京から石油王の自宅用カトラリーの注文が舞い込んだのがはじまりです。その後、第一次世界大戦により軍需生産へ転向せざるをえなくなったヨーロッパの工場の代わりに、生活用品のカトラリーの注文が輸入商を介して燕に押し寄せます。培ってきた技術に加え、ただ形を模倣するのではなく西洋の食文化を研究してより良いモノをつくる努力を重ね、海外からの注文に見事にこたえました。こうして燕の金属洋食器生産がはじまり、時代を経てもなお燕は金属洋食器の街として厚い信頼を置かれています。現在、国産のスプーンの約95%は燕で製造されていることからも、燕は他に類を見ない産地であることが分かります。
そのほか新館では、燕の金属加工業の歴史と変化を紹介している「一般展示室」や、ミニスプーンづくりを体験できる「体験室」、世界中の様々な時代のスプーン約5000点を紹介する「伊藤豊成コレクション 世界のスプーン館」も併設しています。

 

【新館】の一般展示室では、カーブミラー、お菓子の型など身の回りに燕製品がたくさんあることに驚く

 

世界のスプーン館では、壁面すべてに世界各国のスプーンを展示

 

「燕市産業史料館」と聞くと硬派な博物館の印象を受けますが、展示物を見ると自宅にもありそうなモノが並んでいます。暮らしに身近な洋食器は見る人との距離が近く、親しみがわいてきます。同館は職人との距離も近く、七宝彫金展、燕手仕事展やスプーン展など、毎月なんらかの企画展が催されているのは、彼らの協力があるからです。職人と消費者の交流の場にもなっている同館は、3館から構成されているのでとても広く、改めて見学に訪れる人やリピーターが多いのが特長です。燕市産業史料館に、日本の地場産業の素晴らしさを見に出かけてみませんか。

 

一つひとつ見ていくと、繊細で華奢なつくりの美しいスプーンに魅了されます

 

「唐草文打上げ大花瓶」は、一枚の胴板から打ち上げた世界最大の鎚起銅器

 

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インフォメーション

燕市産業史料館は、先人の職人たちの技術遺産を保存する場として建設された博物館です。燕の金属加工技術の起源と変遷を歴史的資料で紹介しています。常設展示のほか、毎月、企画展を開催しています。

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●アクセス

新潟県燕市大曲4330-1

TEL 0256-63-7666

上越新幹線「燕三条」駅から車で5分

詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.city.tsubame.niigata.jp/shiryou/

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