“アートのなかの遊び”を鑑賞&体感~清須市はるひ美術館「ブルーノ・ムナーリ」展

愛知県清須市の清須市はるひ美術館で、9月28日(日)まで「ブルーノ・ムナーリ アートのなかの遊び」展が開催されています。グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、絵本や遊具、子どものための造形教育など多岐にわたる分野で活躍したイタリアの作家、ブルーノ・ムナーリの作品約200点を展示。そのほか、絵本や遊具などを実際に手に取って遊ぶことができるコーナーを設け、ムナーリが考案したワークショップも実施しています。

 

ブルーノ・ムナーリ。「ファンタジア(自由な発想の能力)」という言葉を好んで使った

 

展示室前の両側の壁には、さまざまな素材で作られた色板が貼ってある。目をつぶって触ってみて

 

ブルーノ・ムナーリ(1907-1998年)はグラフィックデザインの仕事に携わりながら、1920年代後半よりイタリアの前衛美術運動“未来派”に参加し、絵画や彫刻を制作・発表してきました。ムナーリの創作活動の根底にあるのが「芸術とは難しいものではなく、すべての人の感性が豊かになるために役立つもの」という考え方。そのため、彼の作品は1つの分野にとどまらず、独創的でユーモアにあふれています。1940年代前半からは、幼い息子のために仕掛け絵本を制作したのをきっかけに、絵本づくりも始めました。それに伴い、絵本や遊具などを通した遊びによって、子どもたちの発想力や想像力を育む造形教育にも取り組むようになります。晩年は日本を含む世界各地で、子どものためのワークショップ活動に力を注ぎました。

 

曲線の壁に囲まれた美しい展示室。入ってすぐ左手に「陰と陽」のシリーズ作品が並ぶ

 

読めない本 MN1(2000)

 

本展では、作品を分野ごとに分けてはいません。1つの作品が、次の作品にどのようにつながっていったかが分かるよう、連続的に展示しているのが特徴です。例えば「陰と陽」シリーズ。単純な色と形で構成されたリトグラフですが、視点をどこに持っていくかによって前景・中景・後景が入れ替わって見えます。多様なものの見方・考え方が取り入れられた作品で、ここからストーリーを膨らませたのが、遊具にもなっている「プラス・マイナス」です。人や木、動物、乗り物などさまざまな絵の素材が印刷された透明のシートを重ねて、自分の好きな絵を作るというもの。まさにアートと連動した遊びで、体験コーナーでも来館者が夢中になってやり続けているそうです。

 

      ゼログラフィーア(1976/1985)

 

      ゼログラフィーア(1977/1985)

 

「デザインは、何かを人に伝えるもの」と考えていたムナーリは、視覚伝達デザイン分野の先駆けでもありました。タイポグラフィー「カンパリ」は、どこまで文字が文字として認識されるか、文字のイメージの強さを検証した実験的な作品です。また、漢字をモチーフにしたと思われる「未知の国の読めない文字」など、読めないからこそ想像を膨らませ楽しむことができるのだ、というムナーリのメッセージが伝わってきます。遊ぶことは人にとって非常に大切なこと。遊び心がなければ、良い作品は生まれません。

 

“旅”シリーズの素描では、『Hong Kong』(1965~1966)の夜景など、世界各国を見て回ることができます

 

  小ざるのジジ(1950

 

今以上に社会の変化が著しい時代において、ムナーリは新しい文明もどんどん取り入れていきました。ゼロックスがコピー機を売り出した1960年代には、コピー機を使って「ゼログラフィーア」を制作。コピーする時に原稿を動かして、スピード感やブレを表現しました。複製するためのコピー機で、世界でただ1つのオリジナル作品を作るという逆説の発想、そして遊び心。その柔軟かつ自由な発想は、私たちにより広い世界、可能性を見せてくれます。

 

ストッキングの生地素材をカバーに使った照明器具(中央)など、ユニークな作品が多い

 

ずらりと並ぶ書籍・絵本。子どものための絵本だけでなく、造形教育やデザインに関する本なども

 

オブジェにも注目です。機械から着想を得た「役に立たない機械」は、一見シンプルな作品。細い糸でつなげられた幾何学形状の薄い板が天井から吊るされ、かすかな空気の流れに反応して絶えず動いている。しかし、それぞれの板は互いに触れ合うことはない——いわゆるモビールです。しかし、実は板の長さや間隔などがしっかり計算され綿密に作られています。見ているうちに「役に立つ、立たないとは何か」「機械とは何か」という問いを感じるのではないでしょうか。また、1枚の金網を丸めた「凹凸」も興味深い作品です。白い壁に映った金網の影が動くとモアレ効果が生まれ、非常に幻想的。

 

体験コーナー。絵本も多数置いてあり、奥のカーペットが敷かれたスペースでゆったり読める

 

美術館外観。同じ敷地内に図書館と公園があるので親子連れも多く、憩いの場となっている

 

ほかにも、折りたたみ可能で旅行鞄などにも入れられる「旅行のための彫刻」、フォームラバーを使った人形「小ざるのジジ」、子どものための組み立て式家具「ベッド:アビタコロ(小さな部屋)」など、多様な作品が展示されています。2階の体験コーナーには絵本や遊具が置いてあるので、ぜひ手に取って楽しんでください。ワークショップへも、ぜひ参加を。開催日時は、清須市はるひ美術館のサイトで確認できます。

 

インフォメーション

清須市はるひ美術館は、1999年4月、愛知県西春日井郡春日町(当時)に開館。春日町と清須市との合併に伴い、2009年10月、現在の名称に変更されました。3年に1度開催している「清須市はるひ絵画トリエンナーレ」をはじめ、若手作家や地域にゆかりのある作家の個展、工夫を凝らした独自の展覧会を企画しています。小さいながら、志の高い美術館。清須市立図書館、はるひ夢の森公園とともに文化ゾーン「清須市夢広場はるひ」を形成し、清須市のまちづくりに貢献しています。

 

●アクセス

愛知県清須市春日夢の森1番地
TEL 052-401-3881
JR東海道本線「清洲」駅下車、徒歩約20分、または「きよすあしがるバス」を利用

詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.museum-kiyosu.jp/