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和美人なら知っておきたい手仕事の技

「竹製品を和紙と着物地で彩ってつくる一点モノ、ピュア工房の「一閑張り」

竹カゴなどに和紙や生地を貼り重ね、柿渋を塗った「一閑(いっかん)張り」。新潟市西区でピュア工房を主宰する高野純子さんは、約10年前から一閑張りのバッグ、カゴ、小物を製作、販売するほか、講師としても活躍しています。

書類を入れたり衣類を入れたり、古くからさまざまな場面で使用されてきた一閑張りですが、その由来には諸説あります。飛来一閑という人物が考案したから、また農閑期につくられることが多かったから「一閑張り」、そのほかに一貫の重さにも耐えられる強度を持つことから「一貫張り」とも言われます。

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どれも一点モノの一閑張りのカゴや小物入れ。文字が読めるように柿渋の色合いを作品ごとに調整している

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ピュア工房の高野純子さん。右は、お孫さんが入って遊ぶお気に入りだという雪椿のカゴ(柿渋は塗っていない)

一閑張りをはじめる前から、段ボールや和紙を用いて箱をつくったりしていたという高野さん。本で一閑張りのことを知り興味を持つと、奈良や福島で創作活動をしている人を訪ね、独学だけでは知り得ない技術を学びました。高野さんによると、基本があるようでないため、それぞれのやり方があるという一閑張り。高野さんも徐々に自分のスタイルを構築し、始めてわずか1~2年でピュア工房を立ち上げ、新潟や東京のギャラリーやイベントスペースで作品を発表するようになりました。

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右と真ん中のバッグは、着物の柄と墨文字のバランスが美しい、新作の市松模様

ここで、簡単に一閑張りのつくり方を紹介します。
1. カゴやザルなどの竹製品に、小さく切った和紙を一部が重なるようにして隙間なくのりで貼っていく。内側から始め、外側も同じように行う。
2. 乾燥させる。
3. 生地や古い書物などデザインのアクセントになるものをのりで貼っていく。
4. 乾燥させる。
5. 柿渋(防水性がある)を塗る。
6. 乾燥させる。

貼っていく和紙に決まった大きさはなく、1つ目の工程の下貼りには、余った小さな和紙なども利用します。
「それが手づくりの良さでもあるでしょう。ものづくりは好きだけど、寸法を計ったりするのは嫌いだから、洋服づくりなんかは苦手なの」と笑う高野さん。一閑張りは自由度の高さに魅力があり、大らかに作品づくりを楽しんでいるようですが、こだわる部分はとことん突き詰めて取り組んでいます。

その一つが下貼りです。製作工程でもっとも大切なのは下貼りで、竹編みの目を出すことができれば立体感が生まれ、その後に貼るデザインが生きてくるそうです。そのため、刷毛でのりを塗り和紙を貼ると、さらに刷毛の柄や布を使って和紙を竹編みの目にギュッと押しあてて密着させていきます。竹の編み目に和紙がしっかり入ると、たとえば季節ものの作品をつくるとき男の子の鯉のぼり柄の着物地を貼った場合、鯉のぼりのウロコ部分が立体的に浮かび上がって見えたり、動物や植物の場合は立体感があることで生命力が生まれ躍動的に見えるようになります。

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竹カゴにのりで和紙を貼っていく

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刷毛の柄や布で和紙を密着させ、カゴの編み目を出す

下貼りをしっかりしたら、次はデザインです。どんなものを、どこにどれだけ貼るかで全体の印象が決まります。高野さんは着物の柄を活用したり、墨文字が美しい昔の書物や大福帳を主に使用しています。

着物などの生地、書物や大福帳など、どれ一つ取っても同じものはないので、必然的に高野さんがつくるものはすべて一点モノです。それ以外にも、「自分らしいもの、オリジナルなものを」と考え、自身で書道紙に顔彩で絵を描き、四季折々の植物を作品に取り入れています(取材に訪れた日は、工房の入り口脇にドクダミが描かれたカゴが展示されていました)。また、地域の特徴的なものも取り上げ、新潟県の県木に指定されている“雪椿”や、工房に近い巻地区の郷土玩具“鯛車”なども描き、バッグやカゴなどのデザインに取り入れています。

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カゴの編み目がハッキリしていると、メリハリのある作品になる

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高野さん自身がバッグに荷物をたくさん入れるので、持ち手は三つ編みで持ちやすく頑丈なつくりにしている

年間の製作個数は約100個で、年に1~2回開催する工房展では新作も発表するので毎回頭を悩ませるそうですが、「出来あがるまで分からないから、思い描いたデザイン通りにできたときは嬉しい」と高野さん。昨春までは主に自宅で創作活動を行っていましたが、見学に行きたいと言われることが多いことから、2014年4月、思い切って工房兼ギャラリーを構えました。

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古い書物や大福帳を切り抜き、表面のデザインに用いる

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入り口脇に展示されていた、ドクダミが描かれたカゴ

駅に近く、駐車場があり、雰囲気の良いところを探し求め、田んぼや畑、旧家が並ぶのどかな環境に建つ一軒家を見つけました。1階は工房展を行うなど作品を展示するギャラリー、2階は創作活動を行う工房として運営しています。「来てくれた人にくつろいでもらいたい」と言う高野さんの思い通り、1階は夏でも風が心地よく通り抜けて快適なうえ、田舎に来たような懐かしさが居心地よく、つい長居してしまいそうなスペースです。

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作品を展示している1階

「今後、この場所でもっと何か楽しいことをしていきたい」と、高野さんは新たなことを模索しています。ピュア工房を訪れてみたい人は、事前に電話予約のうえお出掛けくださいね。

インフォメーション

ピュア工房
新潟市西区小見郷屋32
TEL 080-3198-3389
http://www.pure-koubou.net/