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神様辞典 いろいろな産業、仕事を見守る神々

第23章 阿須波神(あすはのかみ)~旅に出た人が無事帰還するように、家で待つ家族が安全を祈願した旅の神

昔の人々にとって、旅に出ることは命がけの行為でした。阿須波神は、旅立つ人が無事に戻ることを祈願して祀られた神様です。「庭中の阿須波の神に木柴さし 吾(われ)は斎(いわ)わむ帰り来までに」。万葉集に遺される防人(さきもり)が西国に赴任するときの歌には、この神の名前が唄われています。

≪永久の別れの儀式「水杯(みずさかずき/すいはい)」≫

旅立ちが決まった本人は、生まれてからこれまでお世話になっていた氏神(うじがみ)様を参拝しました。神様にご奉告をした後、厄払いをします。そして旅立ちの直前になると、親戚や近隣の人々、友人が集まってみんなで飲食を共にしました。江戸時代になると、「水杯」を交わして旅の安全を祈願するようになります。

参加者は旅立つ人に金銭や品物を贈りました。これが現代にも遺っている「餞別(せんべつ)」の風習です。当時は、旅の途中で飢えることがないようにと、見送る人の願いが込められました。わらじを履きつぶして歩くことから、金銭は「わらじ銭」と呼ばれました。これは死者が冥途に旅立つときに塩と一緒に入れられた小銭のことでもあり、旅はそれほど死を意識する行為として捉えられていた証といえます。

家で待つ家族は、旅に出た人が無事に戻るまで、毎日、阿須波神に「陰膳(かげぜん)」をお供えして祈願します。旅に出ている人のぶんまで作り続けた食事を神様にお供えするのです。

≪旅人を妨害する「悪霊神(あくりょうしん)」≫

旅の途中で怪我をしたり、疲労で倒れること、非業の死を遂げることが多かった時代。災難は悪霊神によってもたらされると信じられていました。たまたま遭遇した人が祟(たた)られることもあり、人々は「行き逢い神」を呼んでその存在を畏れました。

「ひるだる神(ひるだるかみ)」は疲れた旅人に憑りつきます。運悪く出会えば、卒倒するとも、足をくじくとも伝えられています。

中国、四国地方に伝わる「袖模もぎ様(そでもぎさま)」の前を通る旅人は、袖や衣をちぎってお供えしなければなりません。自身に災いが降りかからないようにと丁重に祀られました。

≪旅人を守護する「行路神(こうろしん)」≫

険しい山道や峠道の路傍に祀られ、人々の安全を守護してきた神様のことを行路神といいます。観音様や薬師様、八幡様、お地蔵様が祀られていることもありますが、石の祠や自然石といった質素な姿をしている場合も多いようです。石を積んだ塚のような場所もあります。

足や腰の健康を守ってくださる「足王様(あしおうさま)」は、日本人が馬に乗って旅をするようになる前から祀られてきた神様です。腰からの下のあらゆる病気から守護してくださいます。わらじや草履を奉納して祈願し、お礼参りには木製または石製の足とわらじを結び付けた杖を奉納するなど、地域によってさまざまな習慣が伝えられています。

行路神は土地に伝わる山の神や海の神などの自然神と結びついてきました。そのため地域によって異なる神々がいらっしゃいます。関東、東北地方の「荒脛神(あらはばきのかみ)」。ハバキとは、昔の旅人が脛(すね)を保護するために巻き付けていたものです。西日本には「柴神(しばしん)」、奄美、沖縄本島、宮古、八重山諸島には「おなり神(おなりがみ)」が伝えられています。

≪七福神が祀られている神社・お寺≫

鹿島神宮境内の阿須波社/茨城県

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【参考資料・web】

「頼れる神様大事典(著:戸部民夫)」PHP研究所
「日本の神々 多彩な民族神たち(著:戸部民夫)」新紀元社