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和美人になれる美術展

院展の画家たちの名作が一堂に〜桑山美術館「院展の画家たちー近代日本画の開拓と創造—」展

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閑静な住宅街にある美術館の入口。緑のトンネルを通って中へ

日本美術院(院展)の画家たちの作品を一堂に集めた「院展の画家たちー近代日本画の開拓と創造—」展が、名古屋市昭和区の桑山美術館で2015年7月5日(日)まで開催されています。横山大観や菱田春草、下村観山をはじめ前田青邨、奥村土牛、小倉遊亀など、同美術館所蔵の日本画約30点を展示。明治から現代にいたる、院展の歩みを垣間見ることができるものとなっています。

日本美術院は明治31年(1898)、東京美術学校(現在の東京芸術大学)の校長であった岡倉天心を中心に創設された美術団体です。年2回開かれる展覧会の略称から、院展とも呼ばれています。設立当初は日本画のほか彫刻や工芸の分野も擁していましたが、のちに経営難などで活動を休止、事実上解消してしまいます。しかし大正3年(1914)、前年の天心死去を受け、その意思を引き継ぐ大観や観山らが再興。現在では日本画壇を代表する団体のひとつとして、美術界をけん引しています。

日本画の近代化を目指した院展では、画家たちが日々研究に打ち込み、初期には「朦朧体(もうろうたい)」という新しい表現技法が生み出されました。これは、日本画の代表的な線描を廃した画期的な技法で、今回の展示でも見どころのひとつです。例えば、菱田春草の「暁霧(ぎょうむ)」。朝もやの水辺の風景をぼかしや濃淡だけで表しています。背景の山の稜線も線として描かれておらず、それがかえって湿潤な大気を感じさせるようです。また、鮮やかな海の青色が心をとらえる横山大観「日ノ出」も、海と空が溶け込む情景がモネなど印象派の作品を思わせます。

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菱田春草「暁霧」 明治35年(1902)

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横山大観「日ノ出」 明治34年(1901)

朦朧体には「色が濁って汚い」「腕の未熟さを隠すための技法だ」といった批判もありました。そのため少し距離をおき、別に独自の技法を用いる画家たちもいます。下村観山「蜆子(けんす)」は、風景画の中に禅画を取り入れたもの。多くが墨の濃淡の表現ですが、竹のしなりや葉の勢いなど、線の美しさも大事にしています。さらに、このような禅画は縦画面で描かれることが多いのですが、横幅にして奥行きを広げることで観るものに新しい感覚を与えています。

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下村観山「蜆子」 大正10年(1921)頃

同じ題材を描いても、まったく表現が異なるものもあります。木村武山「寒牡丹」は、画面のほとんどが柔らかな白い雪。寒牡丹は雪の下からわずかに見える程度です。真ん中に鳥が1羽とまり、雪がドサリと落ちる音や動きだけで、静寂が伝わってきます。対して川端龍子「花王図」は、花瓶に活けられた大きな牡丹が画面を占めており、これでもかというほどの迫力。これは日本画というより、洋画のようです。

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木村武山「寒牡丹」(部分)

速水御舟の「小春」は、資料的な価値も高い作品。「炎舞」「名樹散椿」(いずれも重要文化財)など多くの名作を世に送り出した御舟が、16歳になる年の3月、巽画会展に初出品し入選を果たした画壇デビュー作です。秋草を背に独りたたずむ、平安時代の童子。ほつれた扇を手に、大きすぎる浅沓(あさぐつ)でそぞろ歩く様子からは、子どもの無邪気さや純粋さが感じられます。これには、御舟自身の幼さが反映されているとも。まさに御舟の原点と言えるでしょう。また、人物からは手本をもとに模写をした修習のあとが見受けられる一方で、秋草の描き方からはきちんと写生したことがわかります。ぜひ、その辺りにも注目してください。

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速水御舟「小春」 明治43年(1910)

そのほか、本来、形を簡略化する水墨画なのに写生したかのような近藤浩一路「竹筏」、澄んだ色彩と力強い線描が印象的な小倉遊亀「壺の花」「白い花」など、作品数としてはとくに多くはありませんが、個性的な名品がそろっています。同じ院展でも、画家たちは各自工夫しながら、自分なりの新しい日本画を切り開いてきました。それぞれの作品の特徴、良さを味わうことができるでしょう。同時に、友人関係にあった横山大観・菱田春草、師弟関係にあった安田靫彦・小倉遊亀など、画家同士のさまざまな関係を通して作品を観てみるのも面白く、おすすめです。

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近藤浩一路「竹筏」

桑山美術館では、5月23日、6月6日・13日・20日(いずれも土曜日)の午後2時〜3時に参加型ギャラリートークを行います。また、5月30日(土)午後1時30分〜3時には展覧会関連講座「速水御舟の魅力-天才画家の少年期-」を開催しますので、参加してみてはいかがでしょうか。詳細は、同美術館オフィシャルサイトをご覧ください。

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1階展示室。1階では軸物を展示している

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2階展示室。2階は額物を展示。茶室「望浪閣」もある

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四季折々に楽しめる庭園。右奥にあるのが茶席「青山」

●インフォメーション

桑山美術館は、名古屋の実業家で初代館長の桑山清一(1902〜1989)が長年にわたって収集した美術品や工芸品の寄贈をもとに、昭和56年(1981)4月に開館しました。近代の日本画や、鎌倉時代から現代にいたるまでの茶道具を中心とする所蔵品は、それぞれのテーマごとに年3回の展示替えをしながら公開しています。また、庭園内には茶席「青山」、本館2階には茶室「望浪閣」、別館2階には立礼席、そして別館1階には多目的ホールが設けられ、広く一般の人たちの交流の場としても利用されています。

 

アクセス

名古屋市昭和区山中町2-12
TEL 052-763-5188
地下鉄鶴舞線「川名」駅下車、徒歩8分、または市バス「山中」下車、徒歩3分
詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.kuwayama-museum.jp